$圏外の日乘-『江戸川乱歩異人館』1
(集英社 ヤングジャンプ・コミックスBJ、2011.2.23)

前に『エロチック乱歩』という
オムニバス(?)映画を紹介しましたが、
そこで原作となっていた
「人間椅子」「屋根裏の散歩者」
最近、コミカライズされているので、ご案内。

もちろん映画のコミカライズではなく
江戸川乱歩の原作をふまえたコミカライズで、
こちらは近年出色の出来映えといえます。


第1話は「異人ノ壱/穴男~屋根裏の散歩者~」。
副題(チルダ記号の後)が原作です(以下同じ)。

穴男かあ。
確かに天井裏の節穴から覗くから
そういえないこともないけど(苦笑)

基本的に原作通りですが、
明智小五郎が犯行を見抜いて終わり
という形にせず、
郷田三郎の異人ぶりを
(というより、もはや怪人ですが)
強調するオチの付け方は見事でした。


第2話が「異人ノ弐/座男~人間椅子~」。

座男という日本語は据わりが悪いけれども、
原作と違う最後のオチは、なかなかいいです。

江戸川乱歩を作中人物として
毎回、狂言回しにしなければならないので
オチを変えざるを得ないのは分かりますが、
映画のような改変とは違い、
乱歩世界を崩さないような
独特のオチを付けることに
成功していると思いますね。


第3~4話は、「異人ノ参/
明智小五郎×絞男~D坂の殺人事件~」の
前後編で、
これは、明智の異人ぶりを除けば
比較的原作通りでした。

「絞男」って、なんて読むんだ(苦笑)


そして第5~12話は長編で
「異人ノ四/明智小五郎×壁男~魔術師~」
となります。
これは第1巻では7話までで、
残りは第2巻へと続きます。

「異人」をフィーチャーしたために
何々男というのをタイトルロールに据えねばならず、
稀代の復讐者「魔術師」を「壁男」とするのは
かなり無茶なような気もしますが、
最後まで(第2巻にかかりますが)読むと、
犯罪者自身の属性だけに留まらない
ネーミングだったようで、
これにはちょっとだけ感心しました。


舞台背景こそ原作通りの時代ですが、
江戸川乱歩も美形なら、明智小五郎も美形。
おまけに出てくるヒロインはすべて巨乳で、
エロチックなシーンもばっちり押さえる
(もちろん、それだけがメインではありませんが)
というあたりには、違和感がなくもないですけど、
『ビジネスジャンプ』という
青年誌連載作品ですから、まあ、そこはそれ(藁

ただ、そうはいっても、
乱歩の世界は
割と踏襲できている方ではないか
と思いました。

旧漢字(正字)の使い方が不統一なのが
気にならないでもありませんが、
それに目をつぶれば
なかなか出来の良いコミカライズとして
おススメできます。

ただし万人向けではありません。
特に小さいお友だち向けではありません。

まあ、『ビジネスジャンプ』初出のコミックスを
小さいお友だちが手に取るとは思えませんが、
念のため。

この程度なら、PG-12 ではあっても
R-15 とまでいえるかどうか、
微妙なとこですがね。
(ま、人によりますがw)