$圏外の日乘-心理検死官ジョー・ベケット
(2008/山田久美子訳、集英社文庫、2010.11.25)

メグ・ガーディナーは
同じ集英社文庫から出ている
『裏切りの峡谷』を途中まで読んで、
どうもノレずに
投げ出した記憶があります(^^;ゞ

それが、この作者のもうひとつのシリーズ
エヴァン・ディレイニーものの
第2作だと知ったのも、
読むのをやめた理由のひとつ。
第1作の翻訳も出てるんだと思うと、
ブレーキがかかっちゃいました。
(版元が違うので気づかなかったのです)

あと、エヴァン・ディレイニーという
女性弁護士の言動が
ないしは小説の語り口が
どうも粗雑な感じがしてノレなかった。

だから、今回の本も
ノリノリで読み始めたわけでは
ないんですけど、
最後まで放り出すこともなく
そこそこ楽しめました。
(謎解きは、やっぱり荒っぽいというか
 無茶が目立ちましたがw)


心理検死官というのは訳者の造語だそうで、
ジョー(ジョアナ)・ベケットは
司法精神医学を学んだ精神科医(法精神科医)。
死者の心理を分析して
自殺か他殺か事故か、などを判断する
という仕事のようです。

ホント、アメリカというのは何でもあるね(苦笑)

今回も、自動車事故で死んだ
少壮気鋭の女性検事の死因を決定するために
事故現場に呼び出されるのですが、
この事故に先立って、48時間周期で
連続自殺事件(心中事件)が起きていて、
今回の事故もどうやらその一環ではないかと、
さらには連続自殺(心中)ではなく
連続他殺ではないか
という疑問が生じているらしい。

小説中ではすぐに、
第三者の介入を思わせる描写があり、
連続殺人かもしれないことを明かしています。

だから、その意味での謎はないのですが、
どうやって死に至らしめたのか、
そして誰が、何のために起こしているのか、
という謎が残されていて、
読み手をグイグイと引っ張っていくように
書かれています。

ただ、せっかくの
「心理検死官」という設定が
充分に活かされているとはいえず、
そこそこ出来の良い
ジェットコースター型のサスペンスに
とどまっているのが、
物足りない感じでした。

訳者あとがきによれば、
シリーズ第2作目は
ジョアナの技能を活かした話らしいので、
そちらに期待したい感じです。
(訳されるかな?)


あと、本作品は、1989年に
サンフランシスコで起きた地震が
キャラクター造形やストーリー展開の
キモになっていて、
ちょうど時期が時期だけに
読んでいてびっくりしたことでした。

新刊で出た時すぐに読んでいたら
また印象が変わっただろうなあ。

最近の状況が状況だけに
気軽に読み飛ばせない人もいるかもなあ、
とも思いつつ、
サスペンスもののツボをきちんと押さえた
ウェルメイドな、肩の凝らない娯楽作品
というのが、
評価としては妥当なセンかと思います。
(オビの文句は誉め過ぎ【苦笑】)


なお、ジョアナの母方の祖母は
日本人という設定になっていて、
それに関連して、あるモノも登場します。

そこらへんが
いかにもB級というか、
キッチュなんだよなあ(藁


邦題は、味も素っ気もない感じで
あまり面白そうな印象を与えないのが
ちょっと可哀想かもしれませんね。