以下は、震災前に下書きしとた文章の蔵出しです。

実は、下書きしときながら、
アップしてない記事は
いくらでもあるのでして……(^^ゞ

読み直したら、今書いたとしても
たいして内容に違いはあるまいと思うので
アップする次第です。

なお、震災に合わせて
ちょっと補筆しときました。あしからず。


$圏外の日乘-グレン・グールド 27歳の記憶
(紀伊國屋書店・ポルケ KKDS-3、2001.6.25)

かつては
『グレン・グールド ピアノ演奏の秘密』
(東映【!】)というタイトルや
『グレン・グールド・
 オフ・ザ・レコード/オン・ザ・レコード』
(日本フォノグラム)というタイトルで
リリースされたこともある
1959年のカナダ作品です。
(さすがに持ってません【藁】
 手元の紙資料で確認しただけです)

30分の2部構成による
劇場公開のドキュメンタリー作品らしく
(公開形態はよく分かりませんが)、
日本では2007年に劇場公開されているようです。

紀伊國屋書店版は2000年にビデオが発売され、
翌年にDVD版が出ました。
紀伊國屋書店のDVDシリーズの第3弾です。

だからなのか、ブックレットは付いてません。

写真のDVDジャケの左肩がくぼんでいるのは、
今回の地震で落っこちたとかしたせいではなく、
CDやら本やら何やらを重ねて
ほったらかしにしておいてたせいです(涙)


グレン・グールドについては、
以前、『ゴルトベルク変奏曲』のCDについて
こちらでもふれたことがありますが、
古楽ブーム以前のバッハ演奏では
これを知らなければモグリだというくらい
有名な奏者の一人です。

一般的な知名度も高い。
レオンハルトを知らない人はいても、
グールドを知らない人はいないくらい。

……たぶん(藁

というわけで、いっとき、
『ゴルトベルク』に限らず
集中的に聴いていたことがありました。

そのころ買いあさった
いろいろな雑誌やムックのグールド特集で
この映像の存在を知りながら、
なかなか入手できなかった折も折
DVDを見つけた時は、感無量でした。

といっても、いつ買ったのか、
まったく覚えていないのだけれども(^^;ゞ

出てから、もう10年になるんですねえ(しみじみ)

前半の「オフ・ザ・レコード」は
カナダの田舎で暮らすグールドの日常を
フィーチャーしたものですが、
ニューヨークにあるスタンウェイ社の
ピアノ・コレクションの中から
演奏用のピアノを選ぶシーンから始まります。

モーツアルトをちょろっと弾いて
(モーツアルトの曲もピアノも)ダメ、
これはベートーヴェン向きだけどバッハはダメ
とか言いながらピアノを選んでいくグールドが
キュートでっせ~。
(今ならカワイイ~といわれるのかも【藁】)

愛犬バンコー(バンクォー)との散歩シーンとか、
自宅の、チッカリング社のピアノで
バッハのパルティータを弾くシーンとかも印象的です。

チッカリング社のピアノは
チェンバロの音に似ている、
と書いている資料もありますが、
はっきりいってピアノの音にしか聞こえません(苦笑)


後半の「オン・ザ・レコード」は
コロムビアのスタジオで
バッハのイタリア協奏曲を
録音する風景が描かれます。

当時はこうやって録音してたのね
というのがよく分かる映像ですが、
何といってもイタリア協奏曲の演奏がすごい!

このとき録音したのは、前に紹介した
『未完のイタリアン・アルバム』収録のものなわけですが、
ディレクター・ブースの中の様子も映されていて、
イタリア協奏曲を指して、子どもの弾く曲だ
と録音技師(ディレクター?)が言うカットもあり、
同時代の人間の感覚、というより
音楽ビジネス関係者の感覚というべきかな、
そういうのが分かったりして
興味は尽きません。

レコードでは極力削られている
グールドが演奏中にうなる声が、
ドキュメンタリーだけあって、なのか
明瞭に聴き取れるのも面白い(藁

そんなこんなもあって、映像的には断然
「オン・ザ・レコード」の方が
好きというか、面白い。

自分が今弾いたばかりの曲を
ディレクター・ブースで再生して聴く
というグールドのありよう、
奏者であると同時に聴者になっている
というところが興味深いのです。


今回、久しぶりに観直してみると、
イタリア協奏曲をバックに
ニューヨークの街頭が
騒音込みでインサートされる映像処理は、
グールドが制作したラジオ番組
「対位法的ラジオ・ドキュメンタリー
 《孤独三部作》」(1967、1969、1973)を
彷彿とさせるものがあって、
そんなあたりも興味深く感じました。

このドキュメンタリー映像、
グールドが編集に関わってないにしても、
かなりグールド趣味に近いんじゃなかろうか
なんて思ったり。

ちなみに「オフ・ザ・レコード」終盤では
バンコーを散歩させる映像のバックに
チッカリング・ピアノ演奏による
「フーガの技法」のコントラプンクトゥス第1番が
流れ始めますが、
(しばらくすると、自宅での演奏風景に変わります)
これがまた超スローな演奏で、びっくり。


モノクロ映像ですが、それがまた良いです。

グールドないしピアノ音楽ファンなら
必見でしょう。