
(2005/戸田裕之訳、集英社文庫、2011.2.25)
ここ数年来、北欧ミステリが
よく訳されるようになってきましたが、
『魔女遊戯』もアイスランド作家による作品です。
カバーの「魔」と「女」の間には
アイスランド語の原題が印刷されてますが、
邦訳は、英訳からの重訳です。
シグルザルドッティルなんていう、
PCの変換補助機能がないと
打ち間違えそうな著者名が、
いかにも北欧な感じで(苦笑)
アイスランド大学の印刷室で
ドイツ人学生の死体が発見されます。
死体は凄惨な処理が施されていました。
(カバー裏あらすじには書いてありますが、
ここではあえて秘します。
作者も最初、それで読者を
釣ろうとしているようなので)
やがて、容疑者が捕まり、
事件は解決したかに見えたのですが、
ある日、被害者の母親から
同地の女性弁護士
トーラ・グドムンズドッティルに
(これもすごい名前ですがw)
真犯人を探してほしいという依頼が入ります。
トーラは、被害者の家族の代理人とともに
事件の再調査に乗り出すのですが……
被害者の学生は、
中世の魔女狩りについて調べていて
祖父から譲られた魔女審問書のオリジナルを求めて
アイルランド大学まで
留学してきたらしいことが分かります。
トーラは、被疑者に会ったり、
被害者の友人たちに会ったりしますけど、
次第に調査の眼目が
魔女審問書をめぐるものに重点が移っていきます。
(ちなみに、アイスランドでは女性でなく
男性が魔女、というか悪魔の使いとして
裁かれることが、ほとんどだったらしい)
もちろん、その調査によって
死体に凄惨な処理を施した理由などが
明らかになるわけですが、
呪術絡みで適当な解決を付けるのかと思いきや、
割とまっとうな(常識的な)結末をつけていたのが
ちょっと意外でした。
単にグロテスクなものを売りにした
だけの作品ではなかったわけです。
ただ、読者に挑戦するタイプの作品ではないというか、
そういう意味での伏線が張ってあって、
見事な推理で、あっと驚かされる、
といった種類の感動はありませんでした。
真犯人に気づくきっかけとなる
あるものの扱いは、ちょっといい感じだし、
意外といえば意外な犯人なんですけどね(苦笑)
主人公は離婚した、
二人の子どもを持つシングル・マザーで、
今回、長男が
ホームドラマチックな騒動を起こすのですが
その騒動の処理が、なかなか印象に残りました。
その騒動に関する伏線になっている
娘の台詞に対するトーラの態度は、
こちらの感性からすると違和感を覚えましたけど。
(娘の台詞の内容より、
娘がそういう台詞を吐いたこと
そういう台詞をもたらした体験を
何ら問題視していないあたりがね~)
アイスランドという珍しい(と思う)国の
風俗やなんかが楽しめますので、
そういったことに関心が持てる人は
ちょっと読んでみてもいいかもしれません。