$圏外の日乘-放課後はミステリーとともに
(実業之日本社、2011年2月25日発行)

昨年出た『謎解きはディナーのあとで』が
爆発的にブレイク中、
東川篤哉(ひがしがわ・とくや)の新刊です。

恋ケ窪学園高校の探偵部で副部長を務める
霧ヶ峰涼を語り手とした連作ミステリです。

オビに「脱力かつ衝撃のトリック、
そして、華麗なる伏線の妙」という
書店員さんのコメントが載ってますが、
まさにその通り、そういう雰囲気の
学園ライト・ミステリでした。

探偵部というのは、探偵小説愛好会ではなくて、
野球部が野球をする部活動であるのと同様、
実際の謎を探偵する部だという設定なんですが、
その割には探偵部の実態は書かれておらず、
部長に当たる存在は謎のまま。
霧ヶ峰涼も、副部長を務める割には
名探偵というより迷探偵といった方が
いい感じのキャラクターです。

それにしても驚くなかれ、
全8編中6編が
密室ないし密室状況からの人間消失トリックです。
その確率、実に75%!

文体やキャラクター造形は
まんがか漫才みたいなのに、侮りがたし。

自分が感心したのは
「霧ヶ峰涼の屋上密室」かな。
トリックに感心したというより、
「現場」という言葉の勘違いから
一気に謎解きに持ってくあたりが
見事だったかなあ、と。


キャラクターを描くにあたって
思い切りデフォルメされているため、
読む人によっては拒否感発動させそうな、
それこそ脱力感を覚えそうなシリーズでした。

自分の趣味からすると、
脱力感の方にやや傾くかなあ。

霧ヶ峰涼は、自分の名前が
エアコンのようだと言われることを
異様に嫌っているのですが、
その割には
ソシガヤダイゾウという名前を聞いた途端
小田急線の駅名を連想して、
相手を不快に思わせることに鈍感なんだよね。

ギャグ調だからそういうのも
お約束のリアクションなんでしょうが、
どうもキャラクターとして馴染めない
というのが正直なところだったりします。

でも、むしろそういう方が
読者の多くには、ウケがいいんでしょうか……。