
(紀伊國屋書店 KKDS-222、2005)
紀伊國屋書店から出ている
もうひとつのジャンヌ・ダルク映画です。
1928年制作のフランス映画ですが、
監督はデンマーク人のカール・Th・ドライヤー。
日本では翌1929(昭和4)年に公開されました。
尺が96分のモノクロ、サイレント映画で、
ピアノ伴奏は、このDVD用のオリジナルです。
最初デンマークでプレミア上映された後、
フランスで公開されましたが、
その際、カトリック教会からの抗議があって
検閲を受け、何シーンかカットされたそうです。
当時の日本公開版は、その検閲版ではなく、
世界にプリントを売るために
未使用のネガから再編集したものだそうです。
監督自身が再編集したものだとはいえ、
オリジナルのネガは倉庫の火事で焼失してしまい、
未使用のネガを使用せざるを得なかった
という事情があるようです。
このDVDは検閲版でも再編集版でもなく、
1984年に発見された、
デンマークで上映されたプレミア版から起こした
世界初のハイビジョン・デジタル・マスター版です。
(従って字幕はデンマーク語です)
『裁かるるジャンヌ』も以前、LDで購入しました。

(アイ・ヴィー・シー IVCL-1030S、19—)
例によって商品のどこにも発売年の表示がなく
Amazonでも分かりません。
このLD版のマスターは、
ニューヨーク近代美術館所蔵の
再編集版に基づくフィルムです。
尺は80分で、字幕は当然、英語です。
ですから紀伊國屋書店のDVD版は、
「最もオーセンティックなヴァージョン」
(ジャケットのオビの惹句)
ということになるわけなので、
出たとき迷わず買い求めました。
でも、観たのは今回が初めてです(^^;ゞ
バーグマンの2本(アメリカ版とイタリア版)から
ブレッソンまで観たことでもあり、
この際なので観てみることにした次第。
正直、サイレントを観るのはつらい。
特にこの映画は、ジャンヌの
戦場での活躍などはいっさい描かれず、
裁判から火刑までの流れを追うだけなので、
(そこらへんブレッソン版と
相通じるものがあります)
ピアノ伴奏があるとはいえ、やっぱりつらい、
と敬遠していたのです。
サイレントですから、
ところどころ台詞の字幕が挿入されます。
とはいっても、すべての台詞が
字幕で挿入されるわけではないので、
トーキーに慣れていると筋を追うのに
それなりの苦労を強いられるわけです。
この映画はジャンヌのクローズアップが
多用されていることでも有名で、
こういっちゃ何ですが、
どうにも辛気くさい感じがして、
観始めるのにそれなりの心構えが要ったんです。
ジャンヌを演じたのはルネ・ファルコネッティ。
ボーイッシュな短髪の女優さんです。
上にも書いたように
クローズアップ多用にも関わらず、
ノーメイクで撮られています。
途中で髪が切られるシーンがあり、
ほとんど丸坊主のスタイルで
火刑に処せられます。
とまあ、現代の視聴者に対して
ウケないと思われる要素満載の映画ですが、
最後の火刑のシーンはすごかった!
サイレントなのに
今まで観たトーキーと比べても遜色がなく
いちばん迫力がありました。
ここまで燃やすか! という感じです。
また、聖女を火刑にしたということで
民衆が怒り、暴動が起き、
それをイギリス兵たちが鎮圧するシーンの
スペタクルは圧巻です。
溜めに溜めた緊張の糸が一気に切れた
という感じで、象徴的なカットも含め、
ワンシーン、ワンシーンがすごい!
この最後の火刑シーンは必見です。
サイレントで効果音がないだけに
余計すごみを感じさせます。
そこに至るまでの60分ほどが、
あるいは退屈だと感じられるかもしれませんが、
もし幸いにして観る機会があったら、
ぜひ鑑賞されることをお勧めします。
とか書いた後で YouTube で検索してみたら
(『裁かるるジャンヌ』で検索)
フランス語字幕版(英語翻訳字幕付き)が
8分割でアップされてました。
画像を貼付けようとしましたが、
禁止タグがあるようで、下書き保存ができないので、
アドレスを貼っときます。
最後の火刑と暴動の場面です。
http://www.youtube.com/watch?v=a-VvDjRg4nA&feature=related
ただし、この場面だけ観ても
感動できるかどうか分かりませんが。
(日本語字幕じゃないし……)
1/8のオープニングによると
1985年にリストアされたとありますので
前年に発見されたものに拠るのかもしれません。
だとすれば、紀伊國屋書店版と同じです。
(違うのは再生スピード[フィルム回転数]ぐらいか)
プリントは紀伊國屋書店版よりきれいだと思います。
受難曲風の合唱曲BGMも、なかなかいい感じ。
日本語字幕ではないとはいえ、
こういうのが簡単にPCで観られる時代だとはねえ。