
(新潮文庫、2003年7月1日発行)
『神様』が面白かったんで、
他にも読みたくなって
積んである本の山をあさったところ、
見つかった1冊です。
元の単行本は2000年に出ています。
オビに「新刊」とありますが、
前に書いたような理由による勢いで
買ったんだと思います(藁
これ、最後に入っている表題作が
SFでいう終末テーマの作品だときいて、
ちょっと楽しみだったんですが、
散文詩みたいな感じで、
ちょっと期待してたのとは違いました。
その他は、ほとんどが恋愛小説でした。
少女まんがから、いきなり
レディース・コミックになった感じ
とでもいうか(苦笑)
まあ、レディ・コミといっても
いろいろありますが。
幽霊が出てくる「どうにもこうにも」とか、
人外の恋人との関係を描く「運命の恋人」
みたいな、スーパーナチュラルな話もあるし、
ほとんどがリアルな現実を背景とした
川上弘美流の恋愛がらみの小説です。
語り手と女友達との
交情を描いた話もありますけどね。
恋愛が絡んだ小説も嫌いじゃないですけど、
あまり自分の日常とは関係ないので(^^;ゞ
作品にのめり込めないんですよね。
メンドリを散歩させている男性との
公演での語らいが中心となる「ぽたん」は、
『センセイの鞄』を彷彿とさせて、
ちょっと親しみが湧くかなあ。
ただ、収録作の中では「天上大風」が傑作だった。
「私はいま、貧乏だ。」という出だしからして
引きつけられました。
我が身を振り返ってみて、超リアルなもんで(藁
定見はないけれど、論理的思考を大切にする
主人公(語り手)の語り口が、
実にユーモラスなんですなあ。
女友達との間で、
「別れてくれ」という夫の言葉を
解釈するやりとりなんで、サイコーです(藁
笑いながら読み進む内に、
ああ、論理的に考えるとはこういうことか
と、しみじみと思えてきました。
自分(老書生)は自分のことを
かなり論理的だと思ってましたが、
結局「情」とか「倫理」とか「他人の目」とか、
そのときどきの価値判断に
縛られているんだなあということを、
つくずく思い知らされたことでした(藁
「天上大風」のような作品が
1編でも入ってると、ほっとします。