$圏外の日乘-大魔神の精神史
(角川書店 角川oneテーマ21、2010.8.10)

同じ作者の『モスラの精神史』
(講談社現代新書、2007.7.20)は
面白く読んだ記憶があって、
今度の本もそこそこ期待したんですが、
うーん、やや期待外れ。

というのも柳田民俗学などを援用して
説明しようとしている個所が多く、
自分が、民俗学を援用した説明には
説得力を感じない方だから、なんでしょう。

もちろん鮮やかな切り口や解釈があれば
感心するはずなんですけどねえ。

『大魔神』という作品が、
戦国時代を舞台にした物語だ
というせいもあってか、
『モスラ』の時と違って、
同時代の社会背景や風俗と
リンクさせにくいということもある。

リンクが全くないわけではなくて、
それに類した説明も出てくるけれど、
どうにも魅力を感じなかったんですよねえ。

いちばん気になったのは、
大魔神というキャラクターが、
当時どう受け取られたのか、海外でどう受け取られたのか、
同時代のどういう欲望の現われだったのか、
ということなんですけど、
(観客論とでもいえばいいのか……)
それについては、ほとんどふれられてない。

また、大魔神が今現在、
『大魔神カノン』に変貌した理由
なんてのも言及されていない。

せっかくなら、なぜ今、大魔神なのか、
かつての大魔神とどう意味合いが違うのか、
小野氏なりの解釈を聞きたかった気がします。

初読の印象は、こんなとこでしょうか。