$圏外の日乘-七人の敵がいる
(集英社、2010年6月30日発行)

加納朋子(かのう・ともこ)といえば、
『ななつのこ』で鮎川哲也賞を受賞し、
『ガラスの麒麟』で日本推理作家協会賞を受賞した、
〈日常の謎〉系列の作品が得意な作家として知られています。

最近では、黒川智花主演でドラマ化された
『てるてる あした』の作者として有名でしょうか。

そちらは残念ながら観ていませんが、
小説の方は割と追いかけています。

その加納さんの新刊が『七人の敵がいる』です。

主人公は、出版社に勤めるOL・山田陽子。
息子が小学校に入学することになり、
PTAの会合に参加することになったのですが、
バリバリのキャリア・ウーマンである陽子にとって、
PTAの世界は、職業人としての自分の論理が通用しない、
かつて自分が嫌ってきた、
群れ集う女の論理が通用する世界そのもので、
男性と同等の仕事能力を持つことを自負してきた陽子は
さまざまな価値観のギャップに
見舞われることになるのでした。
(と、ここでハリセンのひとつも打ちたいところw)

そんな陽子の孤軍奮闘を描いた連作シリーズです。

PTAだけでなく、自治会活動や学童保育など、
子どもに関わる負担がすべて陽子にかかってきます。
(ちなみに旦那はいますよ、念のため)

そうした日常、普通にからんでくる雑事
(雑事といっちゃあ、悪いんだけど)を
どうさばいていくかが読みどころ、と
いえるでしょうか。

男女機会均等法とか
男女共同参画社会とかいった
男女平等の掛け声というか、
スローガンなんかは、よく耳にしますけど、
法制度がいくら整えられても、
社会の意識が付いていかなければ、
女性の社会参加は、そうそう進むものではありません。

なーんて、小論文の答案やコメントで書きそうなことを、
エンターテインメントとして楽しませてくれます。

男性かつ独身で、
子どもを育てた経験のない自分にとっては、
女性って、たいへんだなあと思いますね。

たいへんだなあって思うことを
たいへんでなさそうにこなしている
(ように見える)から、すごいんでしょう。

ミステリ・タッチのエピソードもありますが、
全体的には日常を背景とするコメディで、
これもドラマにしたら面白そうです。

エピローグのオチは、
それこそ小論文の解答のように(藁
少々理想的すぎる気もしますが、
思わずエールを送りたくなること請け合いです。

ちなみに「七人の敵がいる」というのは
通常、男性に関していわれることで、
それを女性が主人公の
連作のタイトルにしたところも
批評性が利いていて、ミソ。

オススメです。