第10回本格ミステリ大賞・小説部門は
(というのが、あるんですよーw)
歌野晶午『密室殺人ゲーム2.0』と
三津田信三『水魑の如き沈むもの』に決まったようです。
こちらでご確認ください)

まさかダブル受賞という結果になるとは
思いもよりませんでした。

個人的には、今回紹介する
『Anther アナザー』かとも思ってたんですけどね。
今から選評を読むのが楽しみです。

$圏外の日乘-Another アナザー
(角川書店、2009年10月30日)

時に西暦1998年。
ある地方都市の中学校でのこと。

3年3組というクラスの人気者で
人望もあった生徒が
夏休み中に事故に遭って死んでしまい、
誰もがその死を悲しんだ。そして
その死を受けいれることができず、
死んでいないことにして
残りの学期を過ごすことになった。

学校側も配慮して、卒業式の時には
死んだ生徒の分の席まで用意されたという。

そのためでもあろうか、卒業式の時に撮った
クラスの記念写真に、死んだはずの生徒の姿が
写り込んでいたという。

その翌年からそれは起きた。

新学期になると必ず、教室の机と椅子がひとつ足りず、
卒業すると必ず、誰か一人の記憶がすっぽり抜け落ちる。
そしてその〈もうひとり〉が現われると、
年によっては、そのクラスの生徒や関係者が
事故にあったり自殺したりして、
毎月一人かそれ以上、死んでいく、というのである。

そういう〈呪い〉がかかった中学校に
東京から一人の少年が転校してきたことから、
物語は始まる——。

400字詰め原稿用紙1000枚ほどの作品だそうですが、
その長さを感じさせないほど、サクサク読めました。

1段組で670ページもあります。
個人的には2段組にして、薄くしてほしかったけれど、
本自体はとても軽く、読んでいて手が疲れません。

第1部では、ある状況が本格ミステリ的に解かれ、
第2部では、ある真相が本格ミステリ的に確認されます。

でも、これは基本的にホラーだと思いますけどね。
本格ミステリ的な手法で書かれたホラーというか。

だから、というか、
『十角館の殺人』以来の代表作登場、
というオビの惹句は、いろんな意味で
伊達ではありません。

最後のどんでん返しにびっくり。

綾波レイっぽいキャラも出てくるし、
『ひぐらし』へのリスペクトも感じるし、
セカイ系も入ってる印象ですね。

主人公たちは中学3年生だし、
かなりラノベっぽいセカイが
意識されているように思われます。

これが偶然なら、時代の感性が
よく表われているというべきか。
あるいは時代がようやく
綾辻的感性に追いついたのか。

そんなことも思いながら、読み終わりました。

あ、青春小説としても楽しめます。

唯一、気になったのは、
ラストの合宿所でのあれ(藁

あれは、本格ミステリとしたら、
ちょっとひっかかるような気が
しないでもありません。

まあ、好意的なフォロー(読み or 解釈)は
できなくもないですけどねーf(^^;

これは割と、この手のホラー・ミステリが好きな
万人(?)にお勧めの、癖のない作品だと思いました。

こちらのブログを読んでいるかどうか
分からないけど、
奈央ちゃんにもお勧めできる作品です
(我ながらすごい基準だ【藁

下が、オビを外したカバー全体と、
カバーを外した本体です。

$圏外の日乘-Another アナザー(カバー全体)

装幀は角川書店装丁室の鈴木久美さん。
装画は遠田志帆さん。

きれいですね~:*:・( ̄∀ ̄)・:*: