本日13日は黒川芽以さんのお誕生日です。

おめでとうございま~す! はっぴ・ば~すで~(*゜▽゜ノノ゛☆

だからといって、ゆかりのDVDを観るわけでもなく……
前回に続いて、最近読んだ本の紹介です。

ぬるくてすみません(^^;ゞ



$圏外の日乘-水魑の如き沈むもの
(原書房、2009年12月10日発行)

作者名は「みつだ しんぞう」
タイトルは「みづちの ごとき しずむもの」
と読みます。

原書房のミステリー・リーグという叢書で
ずーっと出しつづけている、
民俗学に由来したホラーと
謎とき本格ミステリとの
ハイブリット作品のシリーズの最新作です。
(といっても、出たのは去年の12月ですが【^^;ゞ)

自分は三津田作品のあまり良い読者ではなく、
そのときどきの必要に応じて
原書房のシリーズを読んでいるだけですが、
シリーズ第1作になるのかな、
『厭魅[まじもの]の如き憑くもの』(2006)が
非常に印象に残っています。
(現在は講談社文庫で読めます)

『厭魅[まじもの]』は
生理的な怖さのようなものを感じさせました。
不合理と合理のバランスが
良かったような気がします。
やや不合理の方にウエイトが置かれているから
怖かったのかなあ。

そういう作風だ、と手筋が読めたからなのか、
作者が謎ときに重点を置きはじめたからなのか、
それ以降の作品は、生理的な怖さは感じませんでした。
むしろ、横溝正史的な世界に
ちんまり収まったような気がしていました。

今回の作品は、奈良県のある小村に残る
雨ごいの儀式の最中に殺人事件が起きます。
それに、取材で訪れていた
怪奇幻想小説作家にして不思議現象オタクの
刀城言耶(とうじょう・げんや)が
事件の謎ときを試みるという話です。

雨ごいの儀式をしている古城の箱船上で
儀式の担い手が神器を使って殺されているという
いわば衆人環視の密室状況における殺人事件です。

それがやがて連続殺人に発展していくのですが、
湖上の密室殺人が起きるまでに
全ページの半分を費やしています。
でも、まったく飽きさせません。

事件関係者の少年が、
家族と共に満州から引揚げてきて、
事件に遭遇するまでの半生(?)が挿入され、
それがなかなか読ませるからです。
(満洲国で空襲、というか
 日本風の民家への機銃照射があったのか、
 と思いましたが、こればっかりは、
 作者が参照した資料によりますので、
 なんともいえません)

事件が起きてからは、ほぼ会話で話が進みます。
それは、いかがなものかと思いますけど
(安っぽい感じがします)
密室殺人のトリックや、探偵役の陥る状況など、
本格ミステリとしては、たいへん楽しめました。

謎ときの場面で、ある人物が犯人かと思われたが、
実は別の人物が犯人で、でもさらに別の人物が……
という、多重解決の面白さもありました。

ただ、今回も怖さという点では今イチ。
(ここ数年では、いちばん良かったけど)
怪異と謎ときのバランスという点で
やや物足りなさが残りました。

『厭魅の如き憑くもの』は
謎ときミステリでありながら
とにかく怖かったんです。
(第一印象。読み直してないんで…)

三津田さんの作品に接すると
いまだにそういうものを求めてしまい、
いまだに満足できないんですよねー。

『厭魅』のときの文章の異常さがなくなって、
だんだん上手くなっているのも原因かとも思いつつ。
(『厭魅』が出た時は、文体面・文章面での苦言を
 聞いたような記憶があるのですが、
 むしろあの文章が効果的でした【苦笑 )

ただ、怖さというのは個人の感想、
皮膚感覚のようなものなので、
今回の小説、さらには以前の小説も
怖いと思う読者がいるかもしれません。

ホラー+ミステリ+民俗学
という小説世界が好きな人には、オススメです。


●誤字の訂正
「古城の箱船」→「湖上の箱船」