$圏外の日乘-ピーターパン(Katokt 訳)
(1911/Katokt 訳、フロンティアニセン、2005.2.28. 第2刷)

以前にも紹介した
〈風呂で読める文庫100選〉の第22~23巻です。

ピーターパンといえば
ディズニー・アニメで超有名ですが
(といって観ているわけではありませんが【^^;ゞ )、
原作を読んだのは、
実は今回が初めてだったりします。

まあ、永遠の少年より永遠の少女の方が
自分の好みにあっているからでしょうが(苦笑)
やっぱり年をとってから読むと、
必ずしもピーターパンに好意は持てませんね。

こんなに性格が悪いのに
永遠の少年として受け入れられているのが
不思議な気がします。

訳文から受ける印象の違いでしょうか。

(少年というのは
 性格の悪いものなのかもしれず、
 そこが魅力的なのかもしれませんがw)

ところで、第13章に
こんなフレーズがあって、びっくり。

 フックは根っからの悪人というわけではありません。
 フックは花をそして美しい音楽を愛していました
 (花に関してはそう聞きましたし、
  フック自身、正真正銘の
  ハープシコード奏者だったのです)。

なんと、海賊フックは
ハープシコード奏者だったのか!

以前にも書いたかと思いますが、
ハープシコードはチェンバロの英語名です。

『ピーターパン』は、もともと
1904年に劇として公開されたものです。
それに基づいて、1911年に
小説版が書かれました。

戯曲版にはもちろん
ハープシコードに関する記述は
ないと思いますが、
1910年代に書かれた児童書に
普通に出てくるのは、やっぱり驚きです。

当時イギリスでは
アーノルド・ドルメッチという人が
古楽器復興運動を起こしていましたし、
ワンダ・ランドフスカが
フランスでデビューするのも
20世紀初頭のことです。

この両者の活動と並行して、
古い音楽や楽器、その演奏が
この時期、行なわれていて、
少なくともインテリの間では
ハープシコードは知られていたと考えられます。

ただし、フックがハープシコード奏者だという設定は、
むしろ古い楽器のイメージがもたらす印象をふまえた
ファンタジーのための小道具かもしれないのですが、
それにしても興味深いことです。

フックがハープシコード奏者だった
と知ることができただけでも
読んだ甲斐がありました(藁