$圏外の日乘-リンカーン弁護士
(2005/古沢嘉通訳、講談社文庫、2009.6.12)

ハリー・ボッシュ刑事シリーズで有名な、
というか、
クリント・イーストウッド監督・製作・主演の
映画《ブラッド・ワーク》(2002)の原作
『わが心臓の痛み』(1998)を書いた作家として
よく知られている、というべきでしょうか
(映画の方は観たことありませんが【苦笑】)、
マイクル・コナリーの新訳です。

下巻(写真右)のオビにもあるように、
この作品も映画化されるようですが
それはともかく、
今年の6月に出た翻訳を、
ようやく読み終えましたf(^^;

刑事弁護士のマイクル・ハラーは
高級車のリンカーンを
移動オフィスにしていることから、
通称リンカーン弁護士と呼ばれます。

ある不動産会社を営む資産家の息子が
女性に対する過重暴力で逮捕され、
ハラーが依頼を受けることになりました。
これまでにない高額な報酬が約束された事件に、
ハラーは奮い立つのでしたが……

ジャンルはリーガル・サスペンス、
要するに法廷ものです。
とはいえ、
前にも書いたような気がしますが、
リーガルものといっても、最近では
法廷で陪審員を前に丁々発止
という場面が描かれることは、
まず、めったにありません。
だいたい法律上の手続きによって、
法廷に行く前に解決しちゃう。

コナリーの新作は、下巻のほとんどで
陪審審判の様子が描かれます。
何だか久しぶりに法廷闘争を楽めた気がします。

ただ、法廷闘争の面白さだけで読ませる話、
というわけではありません。
もうひとつ、ストーリー上の絡みがあって、
サスペンスを高めているんですが、
それはここでは伏せておきましょう。

ただ、そのもうひとつのミソは、
上巻の300ページをすぎた辺りで分かるんで、
そこまでがちょっとタルい感じがするかも。
ただ、下巻に入ると、
ページを繰る手を休ませない面白さになります。

ちなみに上巻の最後まで読むと、
作品の最初にあがっていたエピグラフ
「無実の人間ほど恐ろしい依頼人はいない」
という言葉から、いろいろなニュアンスが
浮かび上がってきます。

ちなみに上の言葉は
J・マイクル・ハラー弁護士
すなわち、ハラーの亡父のもの。
ちょっとしたお遊びですが、
こういうの好きです(^^)ゞ