
(光文社、2009年7月25日発行)
市立図書館の
レファレンス・カウンターの
職員を主人公にした
連作ミステリです(全5話収録)。
オビの惹句に
「探書ミステリー」とありますが、
その手の言葉からイメージされる、
いわゆる本好きへのくすぐり満載ミステリ
という(だけの)作品ではありません。
自治体にとって図書館は必要な施設なのか、
救急医療センターや市営住宅の整備の方にこそ
限られた予算を回すべきではないのか、
という社会派なテーマが盛り込まれています。
長期不況の折から(不況でなくとも?)、
文教系の政策はどうしても予算が削られ、
すぐ役に立つものばかりに眼がいってしまう
というのは、きわめて現実的な問題です。
これまでの、いわゆる探書ミステリは、
本好きのユートピアみたいな
浮世離れした印象が
やっぱり強かったような気がしますし、
本好きは本好きであるというだけで
(本に詳しいというだけで)優越感を抱け、
自尊心をくすぐってくれるようなところが
多分にあったような気がします。
知と情(知識と愛書精神)の世界から
抜け出せなかったといってもいい。
もちろん、そういうタイプの本を
否定しているわけではありません。念のため。
自分もそういうタイプの本は、
嫌いではありませんし。
ところが門井慶喜の今回の本は、
第1話「図書館ではお静かに」や
第2話「赤い富士山」こそ、
上に書いたような探書ものでしたが、
第3話「図書館滅ぶべし」あたりからじわじわと、
市行政によって図書館存続が危機に陥る、
という視点が入り込んできて、
最終話「最後の仕事」では、
図書館はどういう存在意義があるのか
という問題に対して、
知と情以外のところから根拠づけるという、
きわめて珍しい展開を見せていきます。
これはもう、
ひとつの社会派ミステリというべきだし、
そのテーマと見識については、
それなりに評価すべきだろうと思います。
これまでは読書家や愛書家は、
本が好きというだけで良かったのですが
もうそれだけじゃダメだよ、という
世知辛い現実を描いているともいえますけど、
「世知辛い」という書き方をすること自体が、
浮世離れしたいやらしい自尊心を
見事に露呈してますけどね(苦笑)
オビには

図書館のラベルと
バーコードが
あしらわれているし(→)
見返しに続く内扉には
貸出カードが
書かれてて(↓)
本の装幀も、ちょっと
面白いですよん。
