圏外の日乘-虎と月
(理論社・ミステリーYA!、2009年2月発行)

今ごろ読みましたf(^^;

柳広司(やなぎ・こうじ)は
『ジョーカー・ゲーム』(角川書店、2008)でブレイク。
同書は今年度の日本推理作家協会賞を受賞しました。

実はデビュー作『黄金の灰』
(原書房、2001。現・創元推理文庫)を読んで感服し、
それ以来ず~っと読み続けている作家です。

ミステリーYA!は
ヤング・アダルト向けの叢書ですが、
いうまでもなく、優れた子供向け作品は、
平凡な大人向け作品より、面白い。

高校の国語の教科書で
中島敦の「山月記」を読んだ
という人は多いと思います。
李徴(りちょう)という男が虎になった話、
といえば、あああれか、と思い出す人も
多いかもしれません。

『虎と月』はその「山月記」の作品世界を借り、
14歳になった、李徴の息子が、
父親が虎になった謎を解く話です。

「山月記」を読んでいなくても楽しめますが、
「山月記」を読んだことがあると
よりいっそう楽しめるでしょう。

柳作品お馴染の、
主人公が幻覚を見るシーンも出てきますし、
社会をめぐる倫理的な問いも出てきます。
ユーモラスで楽しくて、
シリアスなスパイスも効かせた作品です。

やっぱり感服させられました。

父子関係テーマの作品としても、よく出来ています。
逆に、母親の描かれ方は、
ちょっと可哀想かもしれませんね(藁

次作も楽しみです。