
(ハヤカワ・ミステリ文庫、2009年3月15日、860円+税)
先月、読んだ本なんですが……。
依頼人を3人かかえ、
アルツハイマーの母親を施設に入れて、
麻薬中毒患者の姉がまた逮捕される
といった状況の弁護士が主人公。
主人公は、有罪だと分かり切った被告を弁護することに
疲れ切っていて、仕事を辞めようとしており、
最後の依頼人くらい本当に無実の人間であってほしい
と神に祈っていました。
そんな時に引き受けた
伝道師殺しを中心に物語が展開します。
依頼人を弁護するためには
被害者の伝道師が性的な堕落者であることを
強調しなくてはならず、
そのため伝道師の息子から命をつけ狙われるハメになります。
複数のストーリーが並行し、絡みあって、
最後に落ち着く構成の巧さはもとより、
無実の依頼人にめぐりあいたいという願いが
皮肉なかたちでかなうあたりのオチのつけ方が見事。
映画『スティング』を観た後のような
快感を覚えさせるラストです。
翻訳も読みやすい。
ただ、裁判員候補者が読んでも
あまり役には立たないでしょうけどね(笑)