ついに「米ドル一強時代」到来?
今週のマーケットはFRBの利下げ凍結懸念とイラン空爆の影響からUSドルの独歩高と世界株式の暴落に見舞われました。かつてはこんなリスク局面では日本円が安心通貨として買われていたのが、今では危険通貨として売られています。
週末のアジア市場でも、イスラエルのイラン空爆を受けて一斉にリスクオフの動きとなっています。日経平均は一時1300円を超える急落となっているほか米10年債利回りは13bpを超える大幅低下。
為替市場では、クロス円中心に急落しているほか、スイスフラン買いが目立っているといったところ。ドル円は仲値にかけ本邦実需の買いが観測されると、一時154.67円まで値を上げる場面もみられましたが、その後はリスクオフから下落。昨日最安値の153.96円を下抜けて一時153.59円まで売り込まれることになりました。ただ、午後に入ってからは154.22円まで買戻されています。
昨日の海外市場では、ウィリアムズ米NY連銀総裁が「私の基本的な予測ではない」としながらも「データが要求するのならば利上げする可能性もある」とサプライズ発言。ボスティック米アトランタ連銀総裁やカシュカリミネアポリス連銀総裁も利下げ時期の後ずれを指摘したことから、米長期金利が一転して大幅な上昇。ドル全般買戻しの動きとなりました。
ドル円やクロス円は下げ渋り。現時点でイランの核施設に被害がないことが報じられると、イランとイスラエルの報復合戦に対する過度な警戒感がいったん後退したとして、ドル円は153.59円を底に154.20円付近まで持ち直している。
いずれにしても、市場筋では「東京市場がリスクオフの受け皿になっている」との声も聞かれるなか、「相場の底を付ける可能性もある」わけで、目先の売り浴びせが終わるのを見極めている状況。
これまでも、こんなリスクオフの動きが長続きしたことはなく、あくまでも、ヘッドラインに反応した週末のポジション調整が必要以上に膨張してしまったがゆえの動きだと認識しておきたいところです。最新情報によるとイスラエルがイランの核施設を攻撃するのではと警戒が高まっているようです。
わが心のメキシコペソは急落。地政学リスクからこれまで積みあがっていた買いポジションを投げ売りする動きが活発化し、対ドルではストップロスを断続的に巻き込みながら一時18.2137ペソと昨年10月以来のペソ安値を付けたほか、ペソ円は8.51円まで急落していたが、9.10円でNY時間を終えた。早くも9円の節目が抵抗になりつつある様子です。流石に9円割ると走りそうな気配が。
トルコリラには買い入れ介入があるのかほとんど変動がないが、ペソの急落で筆者口座口座維持は1368%まで低下。一週間で76%の下落となった。一月前の水準に逆戻り4月以降変動幅が大きい。
「最強通貨」メキシコペソでも「米ドル一強」の流れには勝てないのか
中東情勢の不安定化に加え、外貨準備高も金融市場の動揺への耐性に乏しいことに要注意。この位置となるとハゲタカ勢の仕掛けも。
メキシコ中銀は先月、コロナ禍後初の利下げに舵を切った。ここ数年のインフレ昂進を受けて中銀は累計725bpもの大幅な利上げに動く一方、中南米では利下げの動きが広がりをみせるなかインフレが中銀目標を上回ることを理由に慎重姿勢を維持してきた。
実質金利のプラス幅拡大を受けて通貨ペソは強含みしてインフレ鎮静化を後押ししており、中銀は先行きも慎重姿勢を崩さず利下げにも拘らずペソ相場は堅調に推移してきた。
しかし、足下の国際金融市場は「米ドル一強」の様相をみせるなかでペソ相場も頭打ちに転じている。中東情勢の不安定化に加えて、外貨準備高が国際金融市場の動揺への耐性が乏しいぞと評価される水準に留まることも影響しているぞとみられ、ペソ相場を取り巻く環境に注意する必要があろう。
一方、ニアショアリングは好調、米企業の投資が加速している。
経済省によると、年明けから3月15日までに発表された民間企業のメキシコ投資の合計は315億1200万ドルに達したぞ。2023年の単年実績(年末時点の暫定値)の9割近くに相当する規模です。
新規投資で最も多いのは米国企業で、全体の6割近くを占める。
23年に労働争議が相次いだ米国では賃金水準が上昇し、メキシコ進出のコスト効果は大きい。米国の主要都市への配送ルートがすでに確立されているのもアドバンテージとなっています。
米中対立に収束の兆しが見えず、政策リスクを避けて拠点を再編する「ニアショアリング」では、むしろ米国と長大な国境線を共有する優位性が生きるぞ。1〜3月に発表された投資案件は4万人近い新規雇用を生み出すぞとみられており、巨額の投資の誘致を目指す自治体による綱引きも過熱している。
ペソ安が暫く続いていても、ニアショリングを基にするメキシコのファンダメンタルズは強固だ。いずれペソは上昇してくると楽観しているが、気になるのは財政支出拡大と財政赤字拡大。さらにはトランプ大統領が復元すればメキシコに一波乱ありそうです。