(リマスター版)
ロック自叙伝 9
ウッドストックでも演奏された“ヤスガーの農場”が始まる。
ヤスガーは直前まで会場が決まらず迷走していた野外フェスに対し
自分の農場を提供した爺さんで、映画にも出て演説をぶっていた。
それで歴史的イベントの救世主扱いされた。
フェリックスのボーカルからサビをレズリーが叫ぶ例の定番で、
フェリックスの浪花節とレズリーの江州節の対比が鮮やか。
続く“Travlin' In The Dark”もフェリックスのリードボーカル
から始まりサビは二人のユニゾンになる。
俺は思わず「ジャガーズ」と叫ぶ。
アンジーが怪訝そうな目で見る。
日本のGSで活躍したジャガーズの曲調を思い出したが説明しても解るはずもない。「君に会いたい」とかいうヒット曲やな。
彼らもGSよろしくミリタリールックだけど、違っていたのギターのセレクトで、ストラト2本だったり、レスポールやテレキャスの
ほかにセミアコも使っていた。キーボードもいた気がする。当然、出る音も違っていた。
“Blood Of The Sun”はミディアムテンポのブルースロックだが俺がコピーしていたリフとは少し違う。
3曲とも春先にリリースされた“Climbing”からのナンバーだ。
“Climbing”は事実上のデビューアルバムで"Mississippi Queen"で始まり"Boys in the Band"まで全9曲マウンテンらしいナンバーが揃う。
中でも“支配者”というピアノがメインの曲はプログレっぽい作風を予兆させる。
その意味でキーボードにスティーブ・ナイトを選んだのは大正解だと思う。
彼のバッキングで奏でるレズリーのギターはどれもが美しい。
巨漢の太鼓腹にぶら下がったレスポールJrが陰影に富んだ音色を紡ぎ出す。シングルコイル・マイク一つだけのジュニアでどうして
これほどのニュアンスが出せるのか。
「マーシャルのフルパワーで鳴らすからか。」と思った。
このアルバムからは作詞でもクレジットされる
ゲイル・コリンズが描く印象的な山がジャケットデザインになる。
彼女はパッパラルディの妻で後年パッパさんをあやめる。