[特別展]熊谷守一 生きるよろこび | アンクルコアラのブログ

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米子在住の親友Y 君から「熊谷守一 生きるよろこび」の招待券を戴いていた。

Y 君の大学の先輩が熊谷守一画伯の曾孫であり、今般画伯没後40年の回顧展が開催されることから招待券を入手したのだが、私が美術展鑑賞を趣味としていたのを覚えていて、私にもお裾分け頂いた次第である。

Y 君はこの春で今の会社を退職予定で、3月に挨拶回りのため上京した折に一緒に観に行こうと
思っていたのだが、残念ながら会期中の上京が叶わなくなったため、私と家内のみでこの土曜日に竹橋の国立近代美術館に赴いた。


熊谷守一について詳しく知っている訳ではない。とにかく余分な描写をそぎおとした、「下手うま」とも評されるシンプルな絵を描いた人という程度だ。

この展覧会はその熊谷守一没後40年の回顧展だけに、東京美術学校卒業制作の自画像から始まる画風の変遷がよく分かった。

元々は暗く細密な伝統的油彩画を描いていた人だ。それはそれで優れた技巧を感じさせるが、他の西洋画家達との差異化は難しい。

熊谷守一の場合、原色の組合せたシンプルな描写を極め、陰影や細かい写実を捨象して独自の世界を築いた訳だが、それは彼自身の大事なものを失うことと引き換えに初めて辿り着いた境地ではなかったろうか。

私が思うに、熊谷の画風が大きく変化したのは「陽の死んだ日」と「ヤキバノカエリ」ではなかろうか。

愛して止まない息子と娘の死、父としての悲しみの情と画家としての描く対象に向き合う眼のせめぎ合いから、独自の熊谷ワールドが構築されて行ったように思えてならない。

まあ門外漢の戯言はこの辺にして、図録から幾つか私のお気に入りの作品を紹介しよう。

東京美術学校卒業制作の自画像。熊谷は青木繁など俊秀ひしめく美術学校の首席だった。

展覧会のポスターにも使われている「猫」

これまた有名な「雨滴」

「地蜘蛛」


長女の火葬を終えて帰路につく熊谷らを描いた「ヤキバノカエリ」。描かれていない顔が語っている。



珍しい水墨画「蒲公英と蝦蟆」