ワグネル男声合唱団第142回定期演奏会 | アンクルコアラのブログ

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11月11日(土)、慶應義塾ワグネルソサィエティー男声合唱団第142回定期演奏会を観賞に池袋の東京藝術劇場に赴いた。
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日頃ワグネルOB男声合唱団の演奏会をご案内頂いているH先輩からお誘い頂き、二つ返事でチケットをお願いした。

現役学生の演奏会ではあるが、OB諸氏も賛助出演され、現役と一緒にタンホイザーを歌い上げるとのこと、期待に胸が膨らむ。

ちなみに今回はOBや慶應志木高校に加え、初めてワグネルOBオーケストラが参加して賑々しい演奏会となった。実にめでたいことである。
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オープニングの塾歌からエンディングの丘の上まで、優に3時間を超える熱唱を満喫したことにちなんで、久しぶりに感想をブログに綴ることにしよう。

前回ブログに投稿したのは7月、やはりワグネル絡みの東西OB四連の感想記だった。随分サボったものである。
文章も下手になったかも知れないが、ご容赦頂きたい。(元々下手だから、気にならない?)

オープニングは恒例の塾歌斉唱。やはり何時聴いても身が引き締まる。

いつも聴き慣れているOB合唱団の塾歌と比較すると、やはり現役はどこか線が細くピュアな趣きで新鮮である。

さて第一ステージは男声合唱組曲「ひたすらな道」。「水のいのち」で有名な高野喜久雄作詞・高田三郎作曲の難解な楽曲である。

「姫」「白鳥」「弦」からなるこの組曲は、さまざまな解釈が出来る。私には「白鳥」が強く印象に残った。何故なら「旅立ちの日が迫っているにもかかわらず居眠りしていた白鳥が、やむに止まれず身を引き裂いて飛び立たざるを得なくなり、その後置き去りにした身の一部を取り戻しに帰ってくる」と言うストーリーに人生を感じるからである。

人間は大人になる時に、大事な青春の証を置き去りにして旅立つ。大人になってからそれを回収しようとしても、二度と自分と一体になることはないのに。

私も遥か昔に慌てて旅立った際に、何か大事なものを失ったのかも知れない。今となっては思い出せないが。

若いワグネルの現役学生諸君は、何を置き去りにしようとしているのだろうか?いや、ワグネル常任指揮者の佐藤正浩氏の的確な導きある限り心配はいらないだろう。

第二ステージは伊藤整の処女詩集からの男声合唱組曲「吹雪の街を」。伊藤整と言えば太平洋戦争日記が思い出されるが、本作品は青年伊藤整の恋の始まりと終りを抒情豊かにうたっている。

このステージは学生指揮者H君の指揮による。プログラムに掲載されているH君の写真は、いつも見慣れている質実剛健なワグネルOB諸氏とはかけ離れた風体で、ワグネルも今風に変容して来たのかと一抹の不安を覚えたが、実に気概溢れる指揮ぶりで、全くの杞憂であった。組曲の中では、父が藁打つ音を外の霰が打ち消し、少年を包む言いようのない不安を表現した「夜の霰」が秀逸だった。

第三ステージは、客演指揮者として早稲田OBの清水敬一氏を招いての男声合唱組曲「Enfance finie 〜過ぎ去りし少年時代〜」。三好達治の「測量船」その他の詩集から、木下牧子氏が曲を付けた組曲である。

木下牧子氏の美しい旋律・清水氏の歯切れの良い指揮・そして現役ワグネルメンバーのリリカルな歌声が、三好達治の詩的宇宙を絶妙に表現していた。
私的には第一〜第三の各ステージの中のベストである。組曲の中では「毀れた窓」が特に印象に残った。詩としてはやや技巧に走った感があるが。それにしても三好達治の詩は音律へのノリが良い。

そして最終の第四ステージ。お待ち兼ねの「タンホイザー」である。
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ワグネルOBオーケストラ、現役にOB・志木高生を交えた重層的な合唱、ゲスト小川里美氏とOB谷口伸氏の独唱と、それらを束ねる佐藤正浩氏の指揮。ワグネルファミリーの総力を挙げた熱演はこの日のハイライトであった。
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小川里美氏の清冽なソプラノ、凛としていて暖かみのある谷口伸氏のバリトンはまさに清純なエリザベートと誠実なヴォルフラムそのものである。

また大行進曲とフィナーレは、OB諸氏の声の厚みが現役のピュアな歌声に重なり、華麗にして荘重なハーモニーを醸し出していた。

素晴らしい演奏に酔い痴れ、陶然としている内に終演を迎えた。聞けば現役の定期演奏会でワグナーは四年に一度とのこと、四年後が待ち遠しいものだ。(四年後も演奏会に出掛ける元気があればの話だが。)
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素晴らしい演奏の後は現役諸君によるカレッジソングメドレー。「若き血」「我ぞ覇者」そして四年生が肩を組んでの「丘の上」。今秋は東京六大学野球で塾が優勝、ラグビーも久々に明治に勝利と塾も上げ潮にある中で聴く「丘の上」は格別である。

すべてが終って会場を出ると午後9時を回っていた。1Fでさっきまで熱唱されていたH先輩とお会いした。家路を急ぐ私の耳にH先輩の「ブログ待ってますよ!」とのお言葉がいつまでも残っていた。
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以上拙文を連ねて来たが、門外漢の戯言とご容赦頂ければ幸いである。

最後となりますが、現役学生諸君・OBの皆様・佐藤先生をはじめとするワグネル関係者各位・OBオーケストラの皆様・小川里美さん他客演の皆様、素晴らしい演奏を有難うございました。皆様のご多幸を祈念すると共に、これからもまた素晴らしい演奏をお願い申し上げます。





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