プーシキン美術館展 | アンクルコアラのブログ

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日本酒、ラグビー、美術展、日本古代史、その他ランダムに雑感を綴って行きます。気まぐれなので更新は不定期かも?

8月は特に休む予定はなかったが、この猛暑で身体も疲れを訴えているので今日1日だけ休暇を取った。

ただ盆明けの月曜日、美術館などの施設やレストランでは休業とするところが多く、意外に動きが取りづらい。

いろいろ調べた結果、「プーシキン美術館展」を開催中の横浜美術舘が月曜日も営業中であることが判明、早速行ってみた。

横浜美術舘はみなとみらい地区にあるが、もう何年も行っていない。副都心線が東横線に乗り入れて以降、このエリアがどのように変貌しているのか?みなとみらい駅に着いて地上に出ると見慣れた風景が。
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新しい商業施設「マークイズみなとみらい」は低層型のパティオ風。
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横浜美術舘を正面から。
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すっかりお馴染みとなったジャンヌ・サマリーの肖像がお出迎え
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展示の構成は次の四部構成。全部で66点のコンパクトな展覧会である。
・第1章 古典主義、ロココ(17-18C)
・第2章 新古典主義、ロマン主義、自然主義(19C前半)
・第3章 印象主義、ポスト印象主義(19C後半)
・第4章 フォーヴィズム、キュビズム、エコール・ド・パリ

元々この展覧会は2011年4月から開催される予定であったが、東日本大震災とその後の福島第一原発事故のためにサスペンドとなっていたものだ。

プーシキン美術館は世界有数のフランス絵画コレクションの所蔵で知られており、今回日本初公開の出展も数多い。2年遅れではあるが素晴らしい展覧会が実現したのは嬉しいことだ。

展示作品は何れ劣らぬ逸品揃いであるが、やはりルノワールのジャンヌが素晴らしい。新進女優の、怖いもの知らずではあるが夢と希望を素直に信じるこころが的確に描写されている。画家の深い愛情あっての傑作であろう。

アングルの「聖杯の前の聖母」も良かった。アングルらしい気品に溢れた崇高な一枚である。伏目の表情も日本人好みではないか?

それ以外でもセザンヌの「パイプをくわえた男」、シャガールの「ノクターン」、マティスの「カラー、アイリス、ミモザ」、サンテールの「蝋燭の前の少女」が特に印象に残った。

しかしルノワールとアングルを除いた私のイチ押しは、エドゥアール・ヴュイヤールの「庭」である。

ご覧の通り老婆が二人、公園の陽だまりの中で悠然としているだけの絵である。何の変哲もない、ありふれた日常。しかし木洩れ日が創り出す様々な影は常に移ろい行く。この不断の移ろいこそ、我々の人生そのものとは言えないだろうか?
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ゴッホの「医師レーの肖像」もルノワールのジャンヌと並ぶ展覧会の目玉である。穏やかそうな若い医師の肖像を、ゴッホらしい強い色彩の背景で包んだ作品である。ゴッホは世話になったこの若い医師に深い感謝の意を込めてこの絵を贈ったそうだ。

しかし何故か医師はこの絵を気に入らず、鶏小屋の目張りに使っていたと言う。私には何となくこの医師の気持が分かるような気がする。精神科医という社会的地位、高い教養と専門的知識を有する者として、社会のエリートたる自負は相当なものではなかったか?まして若い。

それがゴッホ描くところの自分は、知性は余り感じられず、若さと実直さばかりが前面に出ている。きっと「これが俺か!」と落胆したことだろう。

ゴッホは変人だがものを描く天才である。きっとこれが若い医師の本当の姿であったのだろう。医師も他人から見た自分の姿を謙虚に受け止める度量があれば、絵を手放すことなく後年大金が手に入った訳だが・・・
これぞ「若気の至り」である。





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