藤本タツキの初期短編集からPART1として4篇をアニメ化しています。
原作は読んでいません。
「庭には二羽ニワトリがいた。」
人喰いエイリアンの襲撃により人類は滅亡寸前となり、
エイリアンたちは人間の生活を模倣して暮らしています。
エイリアンに鶏肉を食べる習慣がないため、
学校の裏庭には二羽のニワトリが飼育されていました。
それは演劇用のかぶり物を付けた人間の生き残りでした。
エイリアンは顔でのみ生物を判別しています。
エイリアンたちは戦闘形態に変身する能力があり、
戦闘力は圧倒的ですが、
知的レベルはそれほど高くないように見えます。
なかには知的生命体を食用とすることに疑問を感じる者もいますが、
ごく少数派にすぎません。
やがて鶏肉が大好物だというエイリアンが転校してきて、
物語は破滅へと向かっていきます。
終末テーマのダークな作品ですが、
描き方はわりと軽めで、
序盤のエイリアンたちによる学園パロディから
終盤の戦闘シーンまで一気に楽しむことができました。
「佐々木くんが銃弾止めた」
高校生の佐々木は川口先生を神様のように崇拝しています。
ある日、教室に川口先生の高校時代の同級生が銃を持って侵入してきました。
川口先生にふられたために転落人生を歩んだと逆恨みしていたのです。
生徒を守ろうとして川口先生が発した「私には何をしてもいいから」という言葉に、
Hな妄想を爆発させる男たちの姿が笑いを誘います。
実は佐々木が川口先生を崇拝するようになったのには原因があって、
夢を追い続けて前向きに生きていけば奇跡と思えることだって起こりえる、
というのがテーマとなっていました。
確かに純金だって実質はフォーナイン(99.99%)なのですから。
ラストも清々しくて素敵でした。
「恋は盲目」
大バカなラブコメです。
伊吹とユリは二人だけの生徒会、
あきらかに両思いなのですが伊吹は告白できずに過ごしてきました。
卒業も近づき伊吹は今日こそ絶対に告白すると決心します。
先生の頼みも断って二人は豪雨の中を下校しますが、
緊張のあまりちぐはぐな言動ばかりで言い出すことができません。
ついには強盗や地球を破壊しようとする宇宙人まで絡んできます。
能天気に笑わせる作品ですが、
初々しい二人が可愛らしくて魅力を感じました。
「シカク」
幼少期から蜘蛛をバラバラの引きちぎって楽しむ異様な性向を持ち、
両親からも見放されてしまった少女が、
成人してシカクというコードネームで呼ばれる最強の殺し屋になります。
シカクの新しい依頼主は吸血鬼ユゲルでした。
不死身な自分を殺してほしいというのです。
3千5百年生きたユゲルには楽しいと思えることがなくなってしまったのでした。
なにしろユゲルは溶岩に入っても、ぬるま湯程度にしか感じないという超不死身ぶりなので、
さすがのシカクにも殺すことができません。
しかし二人は、お互いに初めて出会う価値観を持つ相手に興味を感じて気になってしまいます。
恋の病におちたシカクは、初めての感覚に戸惑い、ユゲルに相談します。
ユゲルは風邪だから病院に行けと塩対応、真に受けたシカクは病院で正体がばれ、
包囲した警官隊と戦闘になってしまいます。
バイオレンス・ラブコメといった印象の作品で。
ヒロインのシカクは、もって生まれた残虐性に忠実に生きている、ある意味純粋で天然なキャラクターです。
現実だったら絶対に近づきたくない相手ですが、
そんなキャラクターを可愛く見せてしまうのがフィクションの魔力と感じました。