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隅の老人の部屋

映画やドラマの紹介。感想を中心に
思い出や日々の出来事を書き込んでいこうと思います。

原題:To All a Goodnight
製作年:1980
監督:デヴィッド・ヘス
脚本:アレックス・レバー
音楽:リチャード・テュフォ
出演:ジェニファー・ラニヨン、フォレスト・スワンソン、キヴァ・ローレンス

(ネタバレあり)

原題は「皆様おやすみなさい」といった意味で眠り=死を暗示していると思われます。
邦題はレンタルビデオの発売会社が適当につけたもので、犯されたお嬢さまは登場しません、
さすがにまずいと考えたのかCS放送時には「女子寮を襲う聖夜の殺人鬼」だけのタイトルとなったようです。

2年前のクリスマス休暇中、カルヴィン校女子寮でイタズラで追いかけっこをしていて、
追いかけられた女生徒がバルコニーから落ちて死亡する事故が起きた。

2年の月日がたち、女子寮は多くの生徒がクリスマス休暇で帰省し、
6人の生徒と管理人のジェンセン夫人、雑用係のラルフだけだった。

寮に残ったシンシアはボーイフレンドを呼んでデートしようとする。
やって来たボーイフレンド、表に出てきたシンシアと次々に殺人者がナイフで刺し殺してしまう。

おとなしいナンシーを除いたメロディ、レイア、トリシャ、サムの4人はボーイフレンドを呼んでいた。
4人のボーフレンドたちT.J.、アレックス、トム、ブレイクは近隣の無人滑走路に自家用機でやって来る。
リビングでパーティが始まり、
飲み物を取りにいったトリシャは、
サンタクロースの服を着てボーイフレンドのふりをした殺人者に喉を切られて死ぬ。

トリシャを探しに出たボーイフレンドのトムは、庭で彼女の死体を見つける。
サンタクロース服の殺人者に襲われて格闘になり、トムは石で頭を割られて殺されてしまう。
殺人者は死体を庭に埋めていく。

サムはブレイクを応接室に連れ込んでセックスし始める。
だが、飾られた鎧の中に殺人者が潜んでいた。
殺人者はクロスボウでブレイクの後頭部を貫き、叫ぶサムの首を斧で断ち切る。
彼氏のいないナンシーは庭をブラブラしていて、叫び声を聞いてもエクスタシーの声と思って寂しさをつのらせるだけ。

ナンシーが邸内に戻るとラルフが声をかけてきた。
何かが起きていると感じているラルフはナンシーに注意をうながし、聖書を渡す。
二人の死体も庭に埋められる。
男たちの中では一番奥手なアレックスがメロディに誘惑されてベッドイン。
お約束を破って二人が無事なのは、犯人が死体を埋めてて気づかなかったという設定なのでしょうか。

夜が明けて何人か姿が見えなくても、どこかにしけこんで寝ているのだろうと誰も気にしない。
ひとりで散歩していたナンシーをアレックスがナンパしようとする。
ふざけるアレックスを避けて森を駆け出したナンシーは何かにつまずいて転倒。
それはラルフの死体だった。

通報を受けてやって来たポランスキー刑事は、
行方不明のカップル二組も含めて全員が容疑者だという。
刑事一人のみで警官も鑑識も来ません。
まあこれは単なる予算の都合なのでしょう。

ポランスキー刑事と交代で二人の刑事が見張りにやって来る。
ジェンセン夫人はポランスキー刑事が帰った後にナンシーからラルフが殺されたことを聞いて驚く。
どう考えてもおかしな展開で、一番に事件を聞かされるはずの立場だし、
刑事が事情聴取すらせずに帰ったことになります。
しかもジェンセン夫人は事件のことをを聞いても、鼻歌まじりに料理を続ける能天気ぶりでした。

二人の刑事もだらけていて、刑事の一人ダンはレイアに誘惑されてしけこむ。
もう一人の刑事ジムは庭をぶらつき、何も考えずにサンタ服の殺人者に近づいて斧で殺されてしまう。

ナンシーとアレックスは邸内を調べて回るが、何も見つけられず何も起こらなくて時間の無駄。
ダンとのセックスを終えたレイアがシャワーを浴びようとするとシャワーヘッドにサムの首が掛けられていた。
しかもベッドでくつろいでいたはずのダンが背中にナイフを突き立てられてシャワー室に倒れ込んでくる。

一方、T.J.とメロディは森でイチャイチャしているところを、
木の上から垂らされた針金の輪でT.J.が首を吊られて死ぬ。
メロディは寮に逃げこもうとするがドアに鍵が掛けられていた。
物音を聞きつけたアレックスが鍵を開けて中に入れる。
アレックスたちはシャワー室でダンの死体とサムの生首を見つけた。

アレックスは電話で助けを呼ぼうとするが、ちょうどその時電話線が植木ばさみで切断されてしまう。
レイアは生きていたが、精神に異常をきたし歌って踊っていた。
ナンシー、レイア、メロディの3人がサンタ服の殺人者に襲われ、メロディが屋外に逃げる。
残った二人の前で殺人者がサンタの面を取ると、それはジェンセン夫人だった。
この事態でもレイアは踊り続けている。

ジェンセン夫人は2年前にバルコニーから落ちて死んだ生徒の母親だった。
ナンシーは全く面識がないのだが、狂ったジェンセン夫人はお前がドラッグを与えたから娘が死んだなどど言いがかりをつけて包丁を手にナンシーに迫る。
ナンシーはジェンセン夫人が包丁を空振りしたすきに、花瓶で殴って気絶させた。

メロディは男たちが乗ってきた飛行機にたどりつき、寝袋で寝ていたパイロットを起こす。
事件を知ったパイロットが、あわてて機を整備し始めるが、いつの間にかコックピットにもぐりこんだ殺人者の操作により二人はプロペラで刻まれてしまう。

一方、寮内ではレイアが踊り歌い続けていた。
気を取り戻したジェンセン夫人はナンシーを探す。
ジェンセン夫人は2年前に事件が起きたバルコニーに隠れているナンシーを見つけるが、
墜落して死んだのはジェンセン夫人のほうだった。

安心したナンシーが泣き崩れていると、ジェンセン夫人の死体を抱えたサンタ服の男が近づいてくる。
ジェンセン夫人の夫だという男がサンタの面を取るとポランスキー刑事だった。
叫ぶナンシーに迫るポランスキー刑事を、吹き抜けになった2階からアレックスがボウガンで射殺する。
大騒ぎの中、これまでアレックスがどこで何していたかは不明。

アレックスは泣き叫び続けるナンシーをなだめ、二人で寮の外に逃げ出す。
寮の表ではレイアが歌い踊り続けるのだった。

設定的には「13日の金曜日」(1980)第1作の舞台を女子寮に置き換えただけのものですが、
Imdbで調べると公開はこちらのほうが先のようです。

 

 

犯人が夫婦で二人いるというのが独特なのですが、
これが最大のネックとなってしまったように感じました。
刑事を登場させる必要から犯行を二晩に分けてしまったため、
間延びして緊張感に欠けた展開となってしまいました。
しかも終盤はシリアスなんだかコメディなんだか分からなくなっています。

脚本の完成度も低くて突っ込みどころ満載です。
鎧に隠れた殺人者なんて、誰も来なかったら一晩中鎧を着て突っ立っていたんでしょうか。
木の上に潜んだ殺人者も、誰も来なかったら一晩中木の上で過ごしたんでしょうか。
警護に当たる二人に刑事も、仕事をする気は全くないように見えました。
犯人が電話線を切るタイミングも絶妙すぎて不自然です。

演技的にも総じて下手で、特にポランスキー刑事役のサム・シャムシャクは派手なジャケットを着ていることもあって芸人にしか見えません。
この作品の出演者で一番有名なのは、どういう理由で出演したかは分かりませんが、
ダン・ストライカー名義でヘリのパイロットを演じたポルノ界の人気スター、ハリー・リームズです。

監督のデヴィッド・ヘスはウェス・クレイヴン監督の「鮮血の美学」(1972)、「ヒッチハイク」
(1976)、「真夜中の狂気」(1980)など俳優としての実績はありますが、
長編映画の監督作はこの作品のみです。