配信アニメの劇場公開版で、「劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来」も絶賛公開中のさなかとあってか空席の目立つ上映でした。
「呪術廻戦」の朴性厚監督最新作ということで期待したのですが微妙な印象の出来栄えです。
アニメとしての完成度はテレビアニメとしては水準以上だと思うのですが、
なにしろ世界最高水準の「鬼滅の刃」無限城編を見た直後なので、どうしても見劣りしてしまい、これは気の毒なことだと思います。
この作品、演出のリズムやテンポ感は悪くないと思います。
問題点は脚本の練り込みが甘くて、ひどく大味な展開になってしまっていると感じられることでした。
ディストピア感のある荒廃して閉ざされた街に住む主人公、ギアは親方とともにジャンク屋を営むかたわら、仲間の多重人格ロボット・Qu-0213やギャンブル狂いのシロクマとともに不当に奪われたものを取り返す闇稼業をしています。
3人は、いかにもいわくありげな美女ノアから父親の形見を取り返す依頼をされ、不審に感じたシロクマがしり込みする中、お人好しで報酬も必要なギアが引き受けてしまいました。
実は3人はおとり扱いで、本当の目標であるテープはノア自身が奪い出す。
とまあここまでは良いのですが、
どう見てもノアのほうが腕利きのように描かれるなか、ノアがこっそり3人の荷物にテープを投げ込む展開からして説得力に欠けています。
まあ後々まで見ると、それほど重要なテープが搾取される側の街に置かれていること自体が不自然なのですが。
3人はすぐに身元がばれて奇人変人大会な殺し屋たちに襲われます。
3人が戦いに敗れる、あるいはテープの重要さを知らない3人が捨ててしまうなどのリスクを考えれば、そのままノアが持っていたほうが安全と思えました。
ギアたちをメインストーリーに絡ませるうまい作劇を他に考えつかなかったという印象です。
なんとかノアと合流したギアたちは、その存在すら知らなかった首都をめざしますが、プロの殺し屋一味に敗退、ノアを連れ去られてしまいます。
口答えしただけで手下も殺すほど冷酷な敵ボスや殺し屋たちが、主人公たちだけは見逃す展開も都合が良すぎです。
ノアを連れ去った殺し屋一味が唐突に寝返ったり、ギアたちが殺し屋たちの居場所を知っているのも不自然でした。
そんなこんなでノアとともに首都にたどり着いたギアは、この世界に隠された裏側を知る、という本筋がようやく見えてきたところで前編は終了しました。
ちょっと面白くなってきたところなので後編を見るかどうか悩ましいところです。
個人的には、高性能なロボットが人間の生活をサポートする未来にもかかわらず、テレビはブラウン管、動画はビデオテープ、音楽はカセットテープ、どころかコンピュータデータすらテープに記録するという、あえて時代錯誤を狙ったらしい世界観もいまいちハマりませんでした。