映画感想 ジェームズ・ガン監督が描く傑作「スーパーマン」(ネタバレあり) | 隅の老人の部屋

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「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」シリーズ、「ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結」と、
ややオフビートな集団ヒーローもので成功を収めてきたジェームズ・ガン監督がヒーロー中のヒーロー、スーパーマンを描くとあって注目してきました。
「弾丸よりも速く!機関車よりも力は強く!高いビルもひとっ跳び!  
空を見ろ! 鳥だ! 飛行機だ! スーパーマンだ!そうです、スーパーマンです。」の名ナレーションを毎週楽しみにした世代の私にとっては、
時代が変わってもスーパーマンだけは愚直なまでに正義を追求する存在であってほしいと思っています。

今回はいきなり敗北したスーパーマンの姿から始まります。
人の命を守りたい一心から侵略戦争を阻止したスーパーマンは物議をかもし、
侵略国の英雄を名乗る相手に敗北を喫してしまいました。


その正体はスーパーマンの宿敵レックス・ルーサーの手下ウルトラマンなのですが、
更に裏の姿があって物語を盛り上げます。
レックス・ルーサは大富豪にして悪の天才ですが、
人としてはクズの極みで自らのセクハラ・パワハラぶりがばれるのを恐れて元恋人を異空間に監禁するほどの小心者でもあります。

ルーサーは無数の猿を操りネットに誹謗中傷を書き込ませて世論を操作しています。
現在のネット状況に対する痛烈な皮肉ですが、単純に否定だけしているわけではありません。
彼の犯罪を暴くのもSNS用を装って撮られたスマホ写真だったりします。

ルーサーはスーパーマンを宇宙からの侵略者として排除しようと企みますが、
彼によって解析されたクリプトン人であるスーパーマンの両親のメッセージは、スーパーマンのアイデンティティを揺るがすものです。
地球に対する移民でもあるスーパーマンのラストの選択には感動させられました。

この作品はジェームズ・ガン監督が得意とする集団ヒーローものをさらに発展させてもいて
グリーン・ランタン、ホークガール、ミスター・テリフィックからなる仮称ジャスティス・ギャングも活躍します。
グリーン・ランタンは最初の登場シーンでは、これまでと全く異なるビジュアルで田舎の兄ちゃんみたいな雰囲気もあり大丈夫なのかと思ってしまいましたが、
言動はしっかりしていて終盤ではヒーローとしての決断を見せ安心させてくれます。
スーパーヒーローだけでなく、デイリー・プラネット社のメンバーも英雄的な行動を見せて作品を盛り上げていました。

今回、世界の危機を回避するために大活躍するのはヒーローチームでも際立った知性派ミスター・テリフィックですが、
スーパーマンの窮地を救うのは実写版初登場となり、おバカ犬の一面を持つスーパードッグ、クリプトです。


さらに事件の真相を暴くのはスーパーマンのガールフレンド、ロイス・レインとデイリー・プラネット社の同僚たちの一般人で、特に活躍を見せるのがこれまで頼りない三枚目的キャラクターとして描かれることの多かったジミー・オルセンと一見おバカな彼のガーツフレンドす。


ジェームズ・ガン監督の多様性を肯定する視線を感じました。


スーパーマンの顔を自らの顔に差し替えてご満悦な、多様性を否定するどこかの最高権力者の行動は致命的に想像力が欠けている気がします。

この作品で唯一不満を感じたのは怪獣襲撃のエピソードでした。
ジェームズ・ガン監督が、大好きな日本の特撮ものにオマージュを捧げたという楽しい見せ場なのですが、
その周辺では群衆がのんびり歩いていたり写真を撮っていたりして緊張感が感じられず、
アメリカ人てバカなの?と思わせられてしまいました。