映画感想 荒木飛呂彦原作映画版第2弾「岸辺露伴は動かない 懺悔室」(ネタバレあり) | 隅の老人の部屋

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原作は「ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない」を読んでますが、
「岸辺露伴は動かない」は読んでいません。
実写版とアニメ版は観ています。

ドラマ化の前作「密漁海岸」はシリーズの中でも明るい展開でしたが、
今回は呪いの連鎖に憑りつかれた男の運命が描かれるダークな印象で、
完成度の高いブラック・コメディに仕上がっています。

全編ヴェネツィア・ロケが敢行され、神秘的な雰囲気を盛り上げていました。
ヴェネツィアは古い町並み、大運河、仮面のカーニバルなどで独特な佇まいを見せていて、
映画のロケ地としてよく使われます。
近年でも「ミッション:インポッシブル/デッドレコニング」(2023)やスペインのジャーロ・ホラー「ベネシアフレニア」(2021)が印象的でした。

長編映画化にあたってかなりストーリーをふくらませているようで、
おそらくアニメ版が原作に近いのだと思われます。
玉城ティナもPR番組で原作にないキャラクターだと言ってました。

個人的にはドラマに奥行きが出たし、
泉京香の出番も作れたので成功していると思います。
泉京香を演じる飯豊まりえについては、実をいうと以前はキャリアを積んでいるし演技もうまいけど、
当たり役のない地味な俳優ととらえていました。
その印象がくつがえされたのが、このシリーズです。
岸部露伴にどれだけ邪険に扱われても決してめげない天敵ぶりを発揮して、
しかもかなり強力な呪いでさえなんとなく跳ね返してしまう強運の持ち主。
(第1話の「富豪村」では危なかったですが)
当初は原作者がムカつきながら描いたということですが、
見事なバランスの演技で精彩を放ち魅力あるキャラクターになっています。

高橋一生は、呪いも幸運も関係ない唯我独尊の生き方をする岸辺露伴に磨きがかかっていました。
幸運など侮辱だ、とするプライドの高さが、いかにも岸辺露伴という印象です。
ゲストの井浦新も、いつも以上に大げさな表情を作って、
読んでいなくても原作コミックのキャラクターが想像できるパンチの効いた演技を披露してくれています。

ストーリーは幸福の頂点に達すると絶望の底に落とされる呪いが描かれ、
それでは人生最大の絶望とは何か、はたして自分が死ぬことなのか、という展開になっていきます。
さらに空しいのは幸福も絶望も関係なくなってしまい、抜け殻として生き続けることだということかもしれません。