オダギリジョーはテレビ版製作の際に、初監督長編「ある船頭の話」(2019)が海外映画祭で受賞するなど思いのほか好評だったので、そのイメージを壊したくなってオリバーな犬を企画したと語っていました。
もしかすると今回の映画版製作は、テレビ版が好評だったのでイメージを壊したくなったのかもしれません。
ストーリー性を廃してスピンオフのショートドラマ集という印象に作られていました。
冒頭、スーパーボランティア小西(佐藤浩市)が行方不明になったということで、
カリスマハンドラー・羽衣弥生(深津絵里)から応援要請を受けた一平(池松壮亮)たちが出動しますが今回は犯罪が描かれることはなく、
ほどなく別のエピソードに移っていきます。
オリバーの主な出番もそこまででした。
それぞれのエピソードも小ネタの連続で特にオチが用意されているわけではありません。
終盤ではギャグも少なくなって不条理ドラマの傾向が強くなります。
エンディングでは「世にも奇妙な物語」のパロディとなりますが、
オダギリジョーが演じるホストはタモリではなく古畑任三郎似でした。
全体としての満足度はやや低かったのですが、
それでも見どころはいろいろありました。
鹿賀丈史の指を咥える嶋田久作なんて二度と見られないでしょう。
小西の若かりし頃とか、洞窟の占い師の私生活とかも、
ちょっとだけ垣間見ることができます。
新たなダンスシーンとか、
またしても失禁する小西とか、
テレビ版を見ていれば、さらに楽しめる場面もありました。
久しぶりの実写映画出演という深津絵里も、驚くとすぐ気絶することがコンプレックスなカリスマ的ハンドラーとクラブの歌姫という二役で魅力を発揮していました。
余談ですがナンセンス・コメディから不条理ドラマへの移行というのが、
「転々」(2007)やテレビの「時効警察」「熱海の捜査課」などでオダギリジョーとも組んだ三木聡監督の作風の変遷を連想させて、
個人的にはちょっと興味深かったです。
もうひとつ余談ですがオダギリジョーがテレビのシーズン2で麻生久美子たちが歌ったジョン・レノンの名曲「パワー・トゥ・ザ・ピープル」について、ソフト化されたときは著作権の関係で無音になる予定だと話していましたが、今のところ発売されていないようです。
配信版ではどうなっているのか気になります。