隅の老人の部屋

隅の老人の部屋

映画やドラマの紹介。感想を中心に
思い出や日々の出来事を書き込んでいこうと思います。

宇賀那健一監督作品は、これまでに「悪魔がはらわたでいけにえで私」(2023)と「ザ・ゲスイドウズ」(2024)を見ています。
この2作は、ストーリーの細部にこだわらないシュールな展開ですが、
悪魔だって売れないバンドだって、いいじゃないかという大らかさが魅力でした。

今回の主人公は真逆で、自分以外は全く許容せずに殺し続ける殺人鬼です。
世界の浄化を標榜(ひょうぼう)したりもしますが、
とにかく自分の気に入らない人間=ほぼ他人全てを惨殺しまくります。

主人公の九条新介は自称椅子職人で、SNSに自作の椅子を掲載し、
スタッフに応募してきた者たちや、
椅子造りを教えに来た者を残虐に殺していきます。

江戸川乱歩の「人間椅子」は、自分が椅子の中に潜んで女性が座る感触を楽しもうとする猟奇趣味を描いた小説でした。
本作の主人公は人間の死体を切断したパーツを組み立てて椅子を作り上げようとします。

死体の処理がかなりいい加減なので、
顔をしかめるくらいでは済まない悪臭が発生するはずですが、
シリアスに物語の細部を詰めたりはしていません。

九条は犯行理由を語ったりもしますが、
無関係な宅配の配達人やバーテンダーも殺すので説得力は皆無です。

生きたままヤスリで骨を削ったり、目を突き刺したり、
痛そうなゴア描写の連続でした。
特にストーリーがないので、全体的にはかなり単調ですが、
見せ場は豊富といえるでしょう。
85分という上映時間もちょうどいいと感じました。

SNSで見た椅子が気に入ったったという女性バイヤー・加藤夏子が訪問してきます。、
彼女は運よく男のタイミングを外して、すぐには殺されませんが、
特にドラマが展開するわけでもありません。

夏子には、知り合いに椅子の業界に詳しいというバーのオーナー、内田がいて、
彼は九条のSNSに掲載されている椅子が他人の作品であることに気づき、
九条との対決を決意します。

今回は舞台挨拶付きで見ました。
「アメリカン・サイコ」(2001)を意識したという話が出ていましたが、
ストーリーやドラマ性よりもゴア描写の連続にこだわった作風は、
むしろハーシェル・ゴードン・ルイスに近い気がします。

SNSに掲載された情報の危うさもテーマの一つということです。
殺戮描写に押されて、このテーマはあまり前面に出てきません。
写真の盗用は、今どき簡単に検索できるので、すぐにばれそうな気もします。

出演者の演技は意外と上手く感じました。
必死に命乞いする被害者を平然と殺す犯人像はかなり不気味です。

フォトセッションには不参加でしたが、
音楽を担当したベルギーのユニット、Pornographie Exclusiveの挨拶もありました。
ゴブリンとも一味違うヨーロピアン・プログレッシヴがなかなかカッコよかったです。

10人殺して椅子を組み立てるのですが。
監督がパンフレット用に図解したら椅子は9人のパーツで出来ていて、
一人は無駄死にだったというトピックスもありました。

犯人の家に出入りする謎の少女も登場します。
もしかしたら誰にも認められない自分に対し、
理解を示す存在として作り出したイマジナリー・フレンドなのかもしれません。