『明けない夜は無い』
と言った人がいる。
そうかな?
明けない夜を彷徨っている人もいる。
二度と明けない夜を迎えている人も。
俺ももう夜明けを見る事も無いのかも知れない。
だったらそれもいい。
永遠に夜にうつつを抜かしていよう。
この空の遥か向こうで、今も命を奪われている人がいる。
戦車の中で仮眠に耽る人がいる。
云われのない暴力と闘う人がいる。
昔、夜の山の中を彷徨った事がある。
そこは真の闇で、自分の手さえ見えなかった。
未来が全く見えない空蝉を、どうやって捕まえればいいのか分からない。
火を点けた煙草は、吸われる事も忘れてただ燃え尽きていく。
ただ、夜の闇を歩いているのなら、夜空に瞬く星に聞いてみよう。
この夜はいつ明けるんだろう。
シラフな俺は言葉にする事も出来ない。
いつか迎えに来るかも知れない夜明けについて。
星に願おう。
夜明けについて。
ただ、夜のとばりに吠えろ。
太陽が眩しいと言え。
いつか、必ず。