俺が中学生の頃まで、俺はクラシック以外の音楽は雑音だと思っていた。
ところが高校生になると、先輩が演奏するパンクロックに衝撃を受け、一気にロックの世界にのめり込んでいった。
俺は迷わずギターを手に入れ、朝晩弾き続けた。
世は正に歌謡曲、アイドル全盛。
俺の心は自然と海外へ向いていった。
そんな俺が、ある日本人ギタリストに憧れた。
『鮎川誠』
彼が慣らすレスポール・ギターの【ジャキーン】と言う音に、俺は訳も分からず惹き込まれていった。
彼が率いたのが『シーナ&ザ・ロケッツ』と言う唯一無二の洒落たバンドだった。
そこで歌っていたのが、鮎川誠さんの奥さんでもあった「シーナ」だった。
その歌は、可愛くも上手くも無く、まさに【ロック】としか言いようのない歌声だった。
このバンドが好き過ぎて、高校生の俺は彼らのヒット曲を主題歌にしてタイトルもそのまま戴いた「You May Dream」と言う映画を作ってしまったくらいだ。
その頃に、一度だけ下北沢で鮎川夫妻を見かけた。
まるで外国の映画から抜け出てきたかのように恰好良かった。
今でこそ自分のギターにソコソコ自信を持っているけれど、鮎川さんのギターは今でも永遠の憧れだ。
昨年は誘ってくれる友達がいた事もあって彼らのLIVEに3回も行けた。
5月の鮎川さんの66回目の誕生日を祝うLIVEは小さなライブハウスで聴いた。
最前列に陣取って踊りまくっていた俺が伸ばしていた手に、シーナと鮎川さんは優しく握手してくれた。
最後に彼らと逢ったのは9月の野音でのLIVEだった。
出したばかりの最新アルバムからの曲をやりながら、鮎川さんは
「もっと聞かせたい曲はいっぱいあったけど、今年は沢山の新しいベイビー(新曲)が産まれたのでそれを聞いて欲しくて、他に聞きたい曲があった人はゴメンな」
と言った。
それでもシーナが
「一番好きな曲をやるからね。」
と言って最後にやったのは『You May Dream』だった。
そんな新しいベイビーに囲まれて幸せそうだったLIVEから5ヶ月。
シーナ。
シーナ。
シーナ!!
サンクス&ロックンロール!
【ロックの好きなベイビー抱いて】シーナ&ザ・ロケッツ