私が生きている間には決して見ることができないだろうと思っていたことの一つが、高校野球の甲子園での北海道勢の優勝でした。

 

大昔にセンバツで北海高校が準優勝という記録がありましたが、生まれるずっと前の記録でリアリティは感じませんでした。

 

あの夏が来るまでは・・・

 

それまで北海道勢は1回勝てば御の字、ベスト8まで行けば大騒ぎでした。

強豪校と当たる時は、完全試合やノーヒットノーランだけは避けてくれ、そんな感じでの応援でした。

 

組み合わせ抽選の時も北海道のチームとの対戦が決定すると、相手チームから拍手が起きたなんてこともありました。

 

そんな風向きが変わったのは、2004年の夏の甲子園、駒大苫小牧の活躍でした。

 

駒大苫小牧は2回戦からの登場でしたが、初戦の対戦相手の佐世保実業戦、この時点ではとにかく1回は勝ってくれ、そんな応援でした。

見事勝利を収め、次も頼むぞと思っていたら、3回戦の対戦相手は日大三高でした。優勝経験のある強豪校です。

 

強豪校と当たって、いい試合をしても結局負けるのがそれまでの北海道勢でした。

ところがあろうことか接戦で日大三高に勝ってしまいました。

 

もしかしていいとこまで行けるんでないかい?

一瞬そんなことを思いましたが、準々決勝の相手は涌井擁する横浜高校でした。

 

何とくじ運が悪いのだろうか。私を含め道民はそう思ったはずです。

ところが下馬評を覆し、好投手涌井からサイクルヒットを打つ選手もいたりで完勝したのです。

 

こんなことがあっていいのだろうか?道民はこの快進撃は信じられないという感じだったと思います。

 

準決勝は東海大甲府との対戦。駒大苫小牧は強豪校を打ち破って勝ち上がりましたが、得てしてこういう時は、力尽き果てて負けるものです。

 

東海大甲府戦も追い上げられましたが何とか勝利。

北海道のチームが甲子園の決勝を戦うことになりました。

 

決勝の相手は済美、春の選抜の優勝校です。

ここまで来たら、悔いのないように、道民はそんな思いで応援していました。

 

試合は壮絶な打撃戦、序盤大きなリードを許しても駒大苫小牧はあきらめず、優勝を果たします。歴代最高のチーム打率でした。

地元紙の北海道新聞は号外を出しました。

 

「やればできる」道内のローカルCMでもそんなセリフが流れていたものがありました。

 

優勝旗は白河の関どころか津軽海峡も越えたと大騒ぎでした。

 

ところがこの優勝は始まりでしかありませんでした。

2005年、2006年と駒大苫小牧は決勝まで駒を進めることになります。

 

その間、大阪桐蔭、智弁和歌山、東洋大姫路などの優勝経験校を次々に撃破していきました。

 

道民もそのころには、どんな強豪校と当たっても「勝てるんじゃね?」そう思い始めていました。

 

テレビの実況もいつしか駒大苫小牧を「王者」と呼ぶことが増えてきました。

北海道のチームが「王者」と呼ばれるようになるとは、誰が想像したでしょうか?

正に王者の名のとおり、駒大苫小牧は3年間で優勝2回、準優勝1回の大活躍を見せます。

 

2007年も駒大苫小牧は甲子園に出場しましたが、広島の広陵にミスが原因で1回戦で敗れています。広陵はこの大会準優勝だったので、もしかしたら広陵に勝っていれば、4年連続決勝に行った可能性もあったかと思います。

 

この後、甲子園で東海大四や北海が決勝戦を戦うことがあったのも、駒大苫小牧3年連続決勝進出というのが影響したのかもしれません。

 

ただ優勝は駒大苫小牧しかしていないので、他の北海道のチームの優勝も見てみたいと思っているところです。

 

またいつの日か「王者」と呼ばれる北海道のチームが出てくることを切に願っています。