私が考える「成長戦略」! アベノミクス成功の鍵!? ※中国、経済成長の終焉? | Old James Bond 通信

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―― 大学教授・宇賀神大介の熱血講義録!――

 私のことを「保守主義者」、もっとあからさまに申せば、「右翼」だと

お思いとすれば、少し違います。私は保守主義(conservatism)と

いうものが嫌いで、この世の中は絶えず進歩し発展し続けるべきで

ある と考えます。つまり、単純にそれが間違った方向に発展しては

困ると考えているだけの人間です。今や「保守」、「革新」という言葉

自体が 社会と相応しくなくなり、「保守」のほうが革新的で「革新」の

ほうが保守的です。安倍首相の掲げる 経済政策、「アベノミクス」も、

日本経済を進歩させ発展させよう という施策でしょう。しかしながら、

最近になって、「アベノミクス」は 行き詰まっているようにも見えます。

そこで、この記事では、どうしたら「アベノミクス」を成功させることが

できるか、私の拙い考えを お話ししましょう。(※末尾に、上海株式

市場暴落に関連する論評を付記しました。)


 皆様も高校、大学で習ったと思いますが、いわゆる経済政策には

3つの政策があります。すなわち、財政政策、金融政策、産業政策

です。「アベノミクス」もこれに相応して、公共投資、金融緩和、成長

戦略の「三本の矢」 から 成っています。まず、これら「三本の矢」の

特質と現状を考えます。


1.公共投資(財政政策)


 公共投資とは、道路、橋などの公共施設を積極的に造り、景気を

浮揚させようとする施策です。ごく簡単にいえば、そのような施策を

重視する立場をケインズ主義といい、その考えを支持する人たちを

ケインジアンといいます。経済評論家の中には、現下のデフレ状況

(総需要不足)から脱するためには、無駄なものでもよいから、何が

何でも公共投資を拡大すべきであると唱える人もいますが、それは

どうでしょうか‥‥。原資として次に述べる 国債(国の借用証書)を

どんどん発行して、最終的に国債を日銀(日本銀行)が買い取れば

よい と考えているようです。気持ちはよく理解できますが、余りにも

需要面のみ重視し 供給面を軽視していないか と思います。例えば、

その考えは、2,520億円の建設費が問題となり、白紙撤回された

新国立競技場建設計画を 是認するようなものです。私は財務省の

「回し者」ではありませんが、公共投資を考えるとき 忘れてならない

大問題は、国の財政赤字が年に30~40兆円もあるということです。

このため、今以上の大型の財政出動による 景気浮揚策は厳しいと

いわざるを得ません。


2.金融緩和(金融政策)


 金融緩和とは、市中に出回る 通貨(円)流通量を 増やし、景気を

浮揚させようとする施策です。これも ごく簡単にいえば、そのような

施策はケインズ主義に基づきます。このケインズ的な施策を批判し

金融政策を考える立場をマネタリズムといい、その考えを支持する

人たちをマネタリストといいます。これまで、「アベノミクス」は、前者、

ケインズ的な施策に依存してきました。どのような方法か 具体的に

いうと、民間銀行 他が保有している国債などを 日銀(日本銀行)が

通貨(円)を増発行して 買い取る(買いオペ)という 方法です。経済

評論家の中には、国債の日銀買い取り と、国債の日銀引き受けを

混同している人も見掛けますが、国債の日銀買い取りは あくまでも

一旦 市中で消化された 国債を買い取る、すなわち、通貨→国債→

通貨となり、最初の通貨のいわば「担保」があります。一方、国債の

日銀引き受けは「財政法」によって禁止されている上に、そのような

「担保」がありません。最終的に通貨が増発行されることは同じでも、

その意味が 大きく異なります。しかしながら、現在 国債発行残高は

約900兆円にも達しており、日銀の国債買い取りという金融緩和は

そろそろ限界です。


3.成長戦略(産業政策)


 成長戦略とは、特定産業の規制を 緩和したり、支援 ・育成したり

して、景気を浮揚させようとする施策です。これも ごく簡単にいえば、

そのような施策を重視する立場をサプライサイド・エコノミクス(供給

重視の経済学)と いい、そういう考えを 支持する人たちを サプライ

サイダーといいます。この施策を構想するには、現実の産業 ・技術

などというものに 精通していなければならないせいか、経済学者や

経済評論家からは、失礼ながらロクでもない意見しか出てきません。

サプライサイド・エコノミクスは理論的に批判が多いので、こういうと

どうも馬鹿にされるかもしれませんが、私の立場はサプライサイド・

エコノミクスにかなり近い といえます。と申すより、「企業に頑張って

もらおう派」です。企業(供給)が頑張ってよりよい製品 ・サービスを

提案すれば、消費者(需要)は自然と付いてくる。経済とは そういう

ものなのです。 ところが、「アベノミクス」は、この「第三の矢」である

成長戦略で立ち止まってしまいました。公共投資、金融緩和が もう

限界だとすれば、「アベノミクス」は この残された成長戦略に賭ける

しかありません。


※サプライサイド・エコノミクスは経済学者の悪評紛々なのに対して、

経済ジャーナリストの評判が上々なのです。これって、一体どういう

意味か お分かりですか? その通り、サプライサイド・エコノミクスは

「正しい」ということです! 経済学者は現実経済をよく知らないのに、

経済ジャーナリストは現実経済をよく知っていますから‥‥! 私は、

若いころから理論経済学、特に数理経済学は、一部エリート階層の

単なる「お遊び」と思っていました!(2016年8月28日付記)


※どう見ても、現在の「アベノミクス」は日銀の金融緩和策に過度に

依存していて、「アベノミクス」=金融緩和=カネの「ばらまき」としか

見えません。しかし、どんなにカネを「ばらまく」としても、企業に売り

たいものがなく、家計も買いたいものがなければ、企業は設備投資

せず、家計も消費しません。実体経済には、何の効果がないという

結果でしかないのです。企業が売りたいもの、家計が買いたいもの、

これを官民挙げて考え出す。それこそが経済をデフレから脱却させ、

成長軌道へ乗せるために必要な政策、すなわち「成長戦略」です!

(2016年10月18日付記)


 もとより 私も、全ての産業に精通している 訳ではなく、そのような

不遜な考えは毛頭 持ってはいません。しかも、成長戦略は遅くとも

3 ~ 5年で効果が表れる必要があります。そこで、以下では、私が

一般の方より多少とも詳しいと思う自動車産業、観光 ・娯楽産業

分野から、若干の成長戦略を提案してみましょう。


1.電気自動車の早急な普及!


 始めに断わっておきますが、ここで提案するのは例の燃料電池車

(FCV)ではなく、あくまで電気自動車です。電気自動車には純粋な

電気自動車(EV)に、エンジンも 動力源のプラグインハイブリッド車

(PHEV)を包括することにします。燃料電池車がいかに問題が多く、

早急に普及させることが困難な代物であるかは、別稿の「トヨタ燃料

電池車MIRAI の奇怪! 『水素社会』の虚妄」で詳述しました。電気

自動車は急速充電器がもし全国に増設されれば、量産化の前提が

整い、コストダウンによる 価格低減が可能となります。幸いなことに、

ハイブリッド車を締め出して、電気自動車の普及を図ろう としている

中国では、環境意識が低く 一向にそれが 進んでいません。日本が、

まず 率先して「電気自動車大国」となるのです! 日本のメーカーは、

日産リーフ、三菱 i-MiEVなどに販売実績を持ち、データの蓄積も

あります。経済産業省が 燃料電池車に固執する理由が、どうもよく

理解できません。どうしても 燃料電池車を普及させたいのであれば、

電気自動車の普及後に、じっくり 時間を掛けて行えば よいことでは

ないでしょうか‥‥。





写真 : 三菱・日産共同開発、次期 i-MiEVコンセプト


※次期 i-MiEVは2016年に発売予定され、2017年には待望の

次期日産リーフ が発売されます。そうなると、電気自動車が急速に

普及すると予想され、燃料電池車など「お呼びでない!」!



2.「若者支援グルマ」の開発!


 ホンダの軽スポーツカー、S660が40~50歳代の顧客に人気だ

そうです。というよりも、20~30歳代の若者には高すぎて買えない

だけです。その間の事情に関しては、別稿の「『若者のクルマ離れ』

対策、『若者支援グルマ』の提唱」で詳述しました。再度 警告します。

自動車メーカーが若者を見捨てていると、自動車産業、日本経済は

それこそ由々しき事態になります! 自動車評論家 ・徳大寺有恒氏

(故人)が、「女性にモテるクルマ を造れば、『若者のクルマ離れ』は

解消する!」と喝破したそうですが、その通りです。別稿にも書いた

ように、以前の「国民車育成要綱」に似た「若者支援グルマ構想」を

練り、若者の気を惹きそうな カッコイイと思われるクルマを、若者が

買える価格で提供すればよいのです。現在、軽乗用車が 規格内で

無理に無理を重ねており、これを新たな規格に改定し、軽乗用車を

「若者支援グルマ」のベースにするのがよいと考えます。


3.自動車メーカーのブランド力向上!


 最近、高級輸入車が走っているのをよく見掛けます。比較的 高い

所得の人が、ブランドの低い国産車を敬遠し、高級輸入車を買って

いるからです。これも、自動車メーカーにとっては由々しき事態です。

いまスーパーカーは除くとして、例えば、ドイツのメルセデス・ベンツ、

BMW、アウディ、イギリスのジャガーのようなブランドが高く魅力の

ある国産車は何でしょうか‥‥。これまで 日本の自動車メーカーは

大衆車、中級車に特化し、ブランド力の低さは 散々指摘されてきた

ところですが、そろそろ ブランド力の向上に 本気で取り組む必要が

出てきました。高級車ブランドは、国内・外では、トヨタが レクサスを、

国外では、日産が インフィニティを、そしてホンダが アキュラを展開

していますが、レクサスの 国内での認知度は何とも微妙です。私が

ブランドメーカーになり得る と考えるメーカーは、水平対向エンジン、

全輪駆動などに伝統を持つスバルです!


4.城郭の天守閣の建て直し!


 ヨーロッパの石造りの城は、武骨かつ堅牢でなかなか素敵ですが、

日本の城も 緻密に設計された縄張り、勇壮ながら 優雅な天守閣と

素晴らしいものです。黒澤明監督(故人)の映画 「乱」では、天守閣

だけの「非現実的な城」が登場し 驚きましたが、天守閣のない城は

あっても天守閣だけの城はありません。この天守閣ですが、例えば、

大阪城、名古屋城の今あるコンクリート製天守閣を、綿密な資料に

基き、木造で建て直したら どうでしょうか‥‥。世界中には 日本の

城郭のファンが大勢います。そういう人でなくても、観光客が増える

こと間違いありません。城郭の周辺に日本の歴史・伝統文化などを

テーマにするテーマパークを併設するのも、面白いかも しれません。

その際、注意しなければいけない点は、テーマパークに啓蒙主義を

持ち込んではならない という鉄則です。 それを持ち込むと、初期の

ハウステンボスのように必ず失敗します。


5.航空宇宙博物館の創設!


 私はアメリカ、ワシントンD.C.に滞在中、2日間に亘りスミソニアン

航空宇宙博物館を 見学しました。そして、こう思いました。日本にも、

このような博物館があったらなぁ~、と。日本には、戦前から現在に

至るまで、世界に誇る航空機技術があります。しかし現在、そうした

歴史と伝統を、集めて紹介する場所がありません。鉄道については

埼玉県さいたま市に鉄道博物館、そして自動車については 愛知県

長久手市にトヨタ博物館 という素晴らしい博物館が あります。日本

各地に ゼロ戦を始め日本の旧軍用機、航空自衛隊の退役軍用機、

民間航空機などが 散在してしまっています。これは、実に勿体ない

限りです。ほとんど アメリカですが、実際に飛行可能な 旧軍用機も

現存しています。日本では、法制から航空機の保管 ・運用は難しく、

滑走路を併設して実機を飛ばせ、とまで申しません。ただし、すぐに

戦争と結び付けるのも、正しい考えとは申せません!


番外 : メタンハイドレードの開発!


 私の専門外ですが、議論沸騰中の「夢の国産エネルギー資源」と

いわれるメタンハイドレード(メタンと水の結合物質)について、一言

触れておきます。 現在 経済産業省(資源エネルギー 庁)が所管の、

石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)を中核とするメタン

ハイドレード資源開発研究コンソーシアム(MH21RC)など 複数の

組織が、 調査研究を実施しています。 しかしながら、正直に申して、

あらゆる意味において、私はよく分かりません。某政治経済評論家

ご夫妻が熱心に調査している日本海の表層型メタンハイドレードは

どうか知りませんが、全体に燃料電池車における水素と 同じような

認識であれば、それで開発を進めることは疑問ですし、3 ~ 5年で

効果が表れる 開発でもないでしょう。しかも、見ていますと、それが

いわば「資源ナショナリズム」と結び付き、実に奇妙な展開 となって

います。このような話の度に毎回思うのですが、安倍首相は軽々に

官僚の口車に乗ってはいけません!!


【注 記】


※「アベノミクス」には、ケインズ主義 とサプライサイド ・エコノミクス、

需要面重視と供給面重視、裁量主義と自由主義 という異なる理論

背景が 混在しているとの指摘が ありますが、私は「アベノミクス」を

そのように理論的に捉える のではなく、もう少し現実的 ・実践的 に

捉える ほうがよいと思います。


※金融緩和 すなわち通貨(円)流通量増大は、株式投資活発化=

株高、通貨(円)価値下落=円安 を誘導し、それらは 下記のような

プロセスの景気浮揚を期待させます。


株高 → 株式資産価値の増大 → 株式保有者の消費拡大


円安 → 輸出競争力等の強化 → 輸出企業等の収益拡大


ただし、円安には、輸入品価格上昇というデメリットもあります。


※経済評論家の中には、国債を限りなく発行しても、自国通貨(円)

建てなので 日銀(日本銀行)が通貨(円)を発行すれば、デフォルト

(債務不履行)には陥らないという人もいますが、これも暴論の類で、

その場合には、凄まじいインフレーション(ハイパー インフレ)となり、

デフォルト同様に国民を苦しめます。


※現在、日本の企業が保有する現金・預金(内部留保ではない)は、

約240兆円に達しており、これをどうにかしろという意見があります。

しかし、それも家計の保有する現金 ・預金をどうにかしろというのと

同じくらいの暴論で、400万社以上あるといわれる日本の企業1社

当たり平均では幾らになりますか‥‥。


※日本には、優秀な自動車メーカー、そして 優秀な電機メーカーが

何社も揃っています。それらのメーカーが、一致団結し 協力すれば、

「世界一の電気自動車」が出来ない道理がありません!


※電気自動車購入への政府補助金(クリーンエネルギー 自動車等

導入促進対策費補助金)が、現行額の1.5倍程度に増額されれば、

電気自動車は一気に普及が見込まれ、経済産業省などもこの種の

試算はしているはずです!!


※電気自動車は、原子力発電と組み合わせる のがよいと考えます。

そうすれば、それこそ「究極のエコカー」です。「脱原発」を 主張する

ことは簡単ですが、例えば「脱原発」し火力発電に依存するドイツの

大気中の 二酸化炭素(CO2)濃度が どうなってしまったか、皆様は

お知りになるべきです。 また、原子力発電は エネルギー 安定供給

のみならず、「国家戦略」上の 重要な意味を持ちます。原子力発電

すると、プルトニウムという物質が生成されます。これが、一体 何を

意味するか、皆様はお分かりでしょうか‥‥。


※日産自動車が、一度は捨てたはずの「技術の日産」という標語を

再び掲げてきました。2017(平成29)年発売予定の電気自動車 ・

2代目日産リーフが 航続距離400kmとも噂されており、そうなると

否が応でも期待が高まります。





写真 : 次期日産リーフ?(最もそれらしい写真)


次期日産リーフは、現行モデルのようにダサくはない、カッコイイ

クルマに仕上げて頂きたい。



※マツダデザイン(魂動デザイン)は、マツダにとってはブランド力の

向上のつもりなのでしょうが、それは「似て非なるもの」といわざるを

得ません。詳しくは、別投稿の「マツダデザインの問題点を考える!

迷い込んだ迷宮!」をお読みください。


※中国は 8 月10日=1.9%、11日=1.6%、12日=1.1% と、

通貨(人民元)の実質的な切り下げをしました。これは、中国経済が

相当に切迫した状況にある ことを窺わせ、世界経済にとって大きな

不安材料 となっています。中国のGDP統計は信用できませんから、

ことによると「ゼロ成長」に近い可能性があります。もしそうであれば、

アジアインフラ投資銀行(AIIB)設立計画も 異常な軍備拡張計画も、

所詮は「絵に描いた餅」です!


(8月25日付記)


上海株式市場において株式相場が暴落し、これを受け世界中の

株式市場で株式相場が波乱の展開となっています。中国の不動産

バブルが崩壊し、続いて株式バブルが崩壊となると、そろそろ 中国

経済の成長も終焉を迎えたかという思いを強くします。共産党一党

独裁下での自由市場経済体制、そうした壮大な実験は完全に失敗

です。振り返れば、1911年の辛亥革命 から 1949年の中華人民

共和国 の樹立に至るまで、中国は「ドロドロ」の状態でした。日本も

その「ドロドロ」に引き込まれ、満州事変、支那事変(日中戦争)へと

突き進んでしまいました。皆様は、1932年に樹立された 満州国が

日本陸軍(関東軍)がでっち上げた「傀儡国家」である と教わったと

思いますが、必ずしもそうとばかり いい切れません。見方次第では、

極めて「自然な国家」なのです。中国は、再びかつての「ドロドロ」に

戻るのでしょうか‥‥。私 一個人としては、中国が「正常な国家」と

なるためには、共産党一党独裁を廃して、「民主化革命」をするしか

ないと考えますし、実際 中国人の方々へそのように伝えてきました。

いずれにせよ、外国の技術を基に 外国の資金によって 製品を安く

生産し 外国へ輸出して儲けるという中国流の「経済成長モデル」は、

もう限界です。こうなれば、日本は中国の経済破綻の影響を回避し、

「アベノミクス」によって 内需と外需(輸出)、バランスのよい 経済を

構築して、前進しようではありませんか。そのためには、この記事で

解説したような「成長戦略」が不可欠です!!