ロースクール2階の教務室の前。


僕が入ろうとすると、タテヤマ教授が勢い良くドアを開け、出て来た。

「教授、ランチですか?」

「イエス。何か用ですか?」

「はい、判例のことで1つ質問があります。よかったら、これ食べてください」

と言って近くのベーカリーで買ってきたパンを渡し、教務室に戻る。


ロースクールに3年もいると、だんだん図々しくなってくる。


今日はセメスター最後の講義。僕にとっては、3年間通ったロースクールの最後のクラスだ。   


一通り質問が終わると、

「7月のバーエグザム(弁護士試験)は受けるの?」

と言うので、

「ええ、受けます」


「憲法や不動産法は勉強しましたか?」

「クラスは取らなかったので独学します」

と答えると一瞬、タテヤマ教授の表情が暗くなったが、励ますように

「グッドラック!」と笑顔で言った。


ランチの後、民主訴訟法のクラスでは、

「この判例について、トヨジー君」

と僕を指名して、

「パーソナルジュリスディクション(人的管轄)はどうなっていますか?」

僕がさっき聞いた、その通りの質問だ。お気遣い、ありがとうございます!


3年かけて、法学修士に必要な24単位を取得した。成績は卒業に必要ギリギリのGPA2.50。これでカリフォルニア州弁護士試験を受ける資格が得られた。


ロースクールを出てオフィスに向かう車を運転しながら、何回も「よっしゃー」と、心でガッツポーズをとった。


しかし、弁護士への道は今まで以上に険しく見えてきた。


Photo courtesy of Southwestern Law School