エルサルバドル到着の翌日。


現地の輸入会社オーナーのジミーが、朝9時半にホテルにピックアップしてくれる約束なのだが、現れない。


結局、10時半に現れた。

「グッドモーニング。昨日はよく眠れたかい」と普通の対応。なんで遅れたのだろう。


イベント会場は、首都サンサルバドルの中央にある料理学校のキッチンだ。ラーメン、焼きそば、すしの担当者が慣れた手つきで準備を始める。


僕は、日本酒を初めて飲む人が多いだろうと思って、ストレートの日本酒は避けて、マンゴージュースで割ったマンゴー酒、カクテルミックスで割ったマルガリータ酒を準備した。


イベントは2部構成。お昼から最初の40人、3時から次の40人が来る。


正午のベルが鳴ると、料理学校の生徒たちが白いキッチン用のユニフォームを着て、続々やってきた。女性がほとんどで、高校生のような幼い顔も混ざっている。


「ジミーさん、未成年に飲ませたらまずいんじゃないですか」

「エルサルバドルにはアルコールの年齢制限は、ありません」

「えっ、ほんとですか」


マンゴー酒、マルガリータ酒とも、何回も列に並び直す生徒が出るほど人気だった。


料理学校の生徒相手ということで、ラーメン担当、焼きそば担当も、それぞれ手を抜かない。ラーメンは、いかに手早くお湯を切って丼に盛り付けるか。焼きそばは、麺をじっくりと両面焼いてからソースをかける、とコツを伝えていた。


一番人気のすしは、ロサンゼルスで40年近く握り、数年前に引退した日本人シェフ、ジョーが「ムイ・デリシオッソ」などと片言のスペイン語が混じった話術と巧みな手さばきで、生徒たちの注目を集めていた。


その晩、地元の老舗と言われるレストランに入った。


ラーメンを啜っているお好み焼き担当に、ラーメン担当が声をかける。

「ここのラーメン、どうですか」

「とろみがあっておいしいですが、麺をよく湯掻いてないのかもしれません」


夕食もそこそこに、キッチンでラーメンの湯がき方講習会が始まった。

(続く)


Photo courtesy of Viator