引き継ぎの日、横田基地内のリチャードさん宅に、新しい先生のシャロンさんがやって来た。
40代で知的で品のある女性で、こちらが緊張してしまう。しかも、日本に来て間もないらしい。
テーブルの上にポットと紅茶のティーバッグがあったので、僕が「Shall I make a cup of tea? (お茶を淹れましょうか?)」と聞くが、全然通じない。リチャードさんが「Would you like some tea?」と“通訳”してくれた。
テーブルを囲んで、前の週にリチャードさんが招待してくれたアメフト試合「ライスボール」の話題になった。僕がアメリカ人のチアガールばかり見ていたと説明すると、リチャードさんが隣から「Cheerleaders」と補足してくれる。
翌週から、シャロンさん宅でクラスが始まった。
家にはハンサムで長身の夫ジェームズさん、17歳と14歳のチャーミングな娘さん達がいて、若い学生の僕たちはいっそう緊張する。
自己紹介の後、シャロンさんが「トラブルは好き?」と聞くから「ノー」と答えると「トラブルが嫌いなの? ホワイ?」と重ねて聞いてくる。
よく聞いてみると、トラブル(trouble)ではなくトラベル(travel)のことだと分かった。ただし、発音は「トラブル」に近い。違うのは前歯で下唇を噛む「V」の発音だけだ。
アメリカ・メリーランド州の実家の話では「最寄りのコンビニまで10マウス」と言う。「テンマウス?」“10匹のネズミ”を想像したが、実は10 miles (10マイル)だった。
これは「基本からやり直さないとダメだ」と感じたのだろう。翌週から発音の練習が始まった。(続く)
Photo courtesy of Stars and Stripes