5歳の夏、北海道から新潟に家族で引っ越し、僕は幼稚園に入った。


北海道では幼稚園に入っていなかったので、はじめての集団生活だ。僕は自分で選んだ、お人形さんの刺繍が入った黄色いバッグを肩にかけて通い出した。


隣の席は、八木さんという女の子だった。僕は「ヤギなのに、どうして人間の形なのだろう」と不思議だった。


サンタクロースは信じていなかったのに、人間の形をしたヤギを信じていたのは面白い。


ある日、友達から「ザリガニを見たことある?」と聞かれた。


北海道では見たことがない。ハサミを持った小さい怪獣みたいなものかな、と思うと、興味が湧いてきた。


友達は、桜の木の下に「ザリガニの墓がある」と、秘密を教えてくれた。2人で何度か掘ってみたが、ついにザリガニは出てこなかった。


幼稚園で、市の農業試験場にブタ見学に行くことになった。誰も本物のブタを見たことは無いので、興奮していた。


そして、豚舎に到着。


あまりの大きさに皆ショックを受けた。


親ブタの背丈は見上げるほど高く、長く四角い胴体はバスのように見えた。白ブタ、黒ブタ、茶色ブタ。


どれも巨大だった。


ヤギ人間、まだ見ぬザリガニ、巨大なブタ。


僕の幼年時代は神秘なものに囲まれていた。


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