(再録)綱淵謙錠「幕末に生きる」(文春文庫・388円+税) | 野球少年のひとりごと

野球少年のひとりごと

本のことを中心に、関西学生野球や高校野球のことをつぶやいています。
また、父・洋画家「仲村一男」の作品を毎日紹介しています。

 

(再録・2022.2.2既出)

朝から宅急便で、先日注文した(東京早稲田の平野書店に)「大岡昇平集」全18巻(岩波書店)が届く。早速開梱すると、さすがに外箱は汚れているものもあるが、本体は開き癖もなくおまけに書店用のスリップまで挟まったままで、ひょっとするとどこかの書店が閉店になってそこの在庫処分かも知れない。美本といってよいものが全巻揃いで7490円(送料ともで)というから驚く。1982年に配本をスタートしていて、当時1巻3200円~4600円しているので、大変な買い得である。今日で読了(1カ月半ほどで)の「安岡章太郎集」全10巻(岩波書店)も、同じ平野書店で購ったものであるが大変状態がよく(新本同様の美本)14200円(送料ともで)は実に廉く感じた(1986年刊行当時に、1巻3600円~4000円した)が、今回はそれ以上である。

 

個人全集を80セット(合計1500冊)ほど保有しているのに関わらず、昨年末から「阿部昭集」全14巻(岩波書店)を含め個人セットを3セット買い求めたわけだが、これら3人のものを手始めに保有の全集のうち未読のものに掛ろうと考えている。一人の著者の処女作から遡るかたちですべてを読了する楽しみを覚えた(その作家と向合うことの魅力)ので、これからは他の単行本との並行になるが全集を熟してゆこうと思う。10年ほどしっかり読むことが出来たら(そのためにも心身とも健康でいる必要があるが)保有している全集の7割くらい(1セット平均15冊として80セット1200冊ある内の)を読了する可能性がある。

 

読了した「安岡章太郎集」では、「ガラスの靴」「悪い仲間」を収録の第1巻、「質屋の女房」を収録の第3巻、「放屁抄」収録の第4巻、「遁走」「舌出し天使」「海辺の光景」を収録の第5巻、「幕が下りてから」の第7巻、「流離譚 ㊤㊦」を収録の第8巻、第9巻がよかった。多くは単行本刊行時に読んでいるが、このように纏まって読むと別種の感慨がある。感慨といえば、再読することになったものの多くはその内容をほとんど覚えていないことであった。50年ほどの時を隔てているにしろ、驚くほどのわたしの記憶力である。いまでも読む尻から忘れてゆくものもあるが、感動を持って読了したものの忘れっぷりは何と言ったらよいのだろうか。

 

今日も幕末もので、綱淵謙錠「幕末に生きる」(文春文庫・388円+税)、「島津斉彬」(文春文庫・437円+税)のことを。歴史小説作家のなかでも綱淵謙錠は幕末をテーマの小説をよく描いてきた一人ではあると思うが、「幕末に生きる」はそれに因むエッセイ集で、もう1冊の、「島津斉彬」は、幕末における代表的な名君のひとりである島津斉彬を独特の愛情を込めて描いている。

 

「幕末に生きる」 桜田門外の変で聞えた銃声は襲撃の合図だっただけではなく、井伊直弼襲撃にも使われ、直弼の体に命中していたかも知れない-生麦事件でのリチャードソン殺しの真犯人は犯人とされた奈良原喜左衛門ではなく、弟の幸五郎であった-など幕末という激動期に生きる人々を、緻密な考証と卓絶した史眼で活写したエッセイ集。

 

   

 

「島津斉彬」 歴代薩摩藩主に暗君なし。なかでも名君の誉れ高き島津斉彬。西郷、大久保ら、後の維新の英傑を従え西洋文明の導入を決断。工業を振興、軍備を拡充、人心を一新させ、日本近代化のマスタープランとなった薩摩藩改造計画を成功に導いた先駆者の全貌を描くとともに、英材育成の秘密に迫るエピソード五十話。

 

   

 

写真は、東山丘陵で撮影する。