(再録)飯島耕一「ヨコハマ ヨコスカ 幕末 パリ」(春風社・2800円+税) | 野球少年のひとりごと

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(再録・2022.1.30既出)

午後から、泉南市に住む弟がやって来る。2時間ほど話して帰る。途中、いつも野菜をいただくYさん(今日はご主人)が大根、八朔、白菜を届けてくれる。玄関前で立ち話する。当地の老人クラブの会長を発足当時(わたしも民生委員として立ち上げに関わった)からされていて、今年80歳になるので誰か代わって貰えないかの相談もあってのこと。わたしは一昨年にすべての地域がらみの仕事を退任したので引受ける気はないし、とにかく何も予定のないいまの生活が気に入っているのでとお断りする。当地に引越しして来て割とすぐに自治会の役員をし、その流れで民生委員を引受け退任後も福祉委員だけは続けていたが、それを辞めてからの1年間はまったく気ままに過ごせたし本も一杯読めた。いまの生活を変える気はない。夕方に、隣に住む次男のところの長男の高校受験(最初に和歌山県の私立高校を受けた)の合格発表があり、合格していた。次は、2月10日の大阪府の私立高校の受験が控えている。「春」までもう少し、頑張りましょう。

 

本の話である。相変わらず幕末に関わるものから、飯島耕一「ヨコハマ ヨコスカ 幕末 パリ」(春風社・2800円+税)と、鳥居 民「横浜富貴楼 お倉」(草思社・1600円+税)の2冊のことを。飯島耕一「ヨコハマ ヨコスカ 幕末 パリ」は、帯に「生と死、日常と狂気、時空の淵を彷徨う男がいる。単行本未収録の「パリ愛惜」ほか1篇を含む作品で構成。話題の詩集『アメリカ』で読売文学賞受賞の詩人による自選短編小説集!」とある。現代詩人が描く幕末の風景とはいかなるものであろうか、興味がある。もう1冊の、鳥居 民「横浜富貴楼 お倉」は、独特の著作家(歴史作家・評論家として)である鳥居 民が、副題に「明治の政治を動かした女」とある横浜富貴楼 お倉を、どのように描いているか楽しみである。幕末から維新、明治とわが国の歴史のなかでもいちばん激動的であった時代の、一齣を取り上げた小説の類いも当然のことに刺激的であることが多い。

 

飯島耕一「ヨコハマ ヨコスカ 幕末 パリ」 「こんな時代を何とかしたくないんですか」と、その女の声は囁き続けた。/「おれはしかし動きたくないのだ。おれだっていやだが、どうすればいいんだ。おれは何もしたくないんだ」と、わたしは内心で繰り返していた。/エスカレーターに乗ってホームの上まで行ってしまえば赤や青や白のセルロイドのような椅子があり、キオスクと呼ばれる売店があり、すでにそこは感傷に耽るような場所ではなかった。(「出発」より)

 

   

 

鳥居 民「横浜富貴楼 お倉」 横浜が日本の中心だった頃の物語 希代の女傑お倉の料亭富貴楼には、伊藤博文、井上馨、陸奥宗光らの元勲が集まってきた。お倉は彼らになにを働きかけたのか。語られなかったもう一つの明治史。

 明治の初め、国際港となった横浜は、戊辰戦争の後遺症が癒えない東京を尻目に活気に沸いていた。新宿の遊女だったお倉はこの活気にひかれるようにして横浜にたどり着き、関内に料亭富貴楼を開業する。お倉の才覚によって富貴楼は繁昌し、明治の元勲たちもここに集まってくる。金沢八景で憲法の草案を練る伊藤博文もその一人。富貴楼は政治と経済の中心になり、お倉の活躍が始まる。/横浜在住の異色の歴史作家、鳥居 民による、秀作『横浜山手-日本にあった外国』に続く横浜物の第二作。

 

   

 

写真は、東山丘陵運動公園の遊歩道で撮影する。