(再録)大岡昇平「堺港攘夷始末」(中公文庫・641円+税) | 野球少年のひとりごと

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(再録・2022.1.29既出)

受験シーズン到来で、隣に住む次男夫婦のところの長男も高校受験で、今日は和歌山の私立高校を受けに行っている。2月10日が大阪府の私立高校で、本命としている府立高校の入試が3月9日にあり合格発表が17日である。子供たちの時と比べると切迫感は少ないが、最初の孫であり何とか望みを叶えさせてやりたいと思う。まあ、親と同じようなコース(府立岸和田高校、関西学院大学)を歩んでくれたら充分だと考えている。性格的にゆったりとした子供であるが、幅広い知識を備えたバランスのいいところが特徴でもあるので、うまく育って(伸びしろはたっぷりあると思うので)欲しい。それと、高校に入った辺りからわたしの書斎の蔵書に興味を感じてくれたら嬉しいのだけれど。子供たち3人は割とよく本を読んでいるほうだと思うが、孫たち(5人いる)はどうだろうか。

 

本の話である。幕末に関するもので、大岡昇平「堺港攘夷始末」(中公文庫・641円+税)と吉村 昭「桜田門外ノ変 ㊤」(新潮文庫・466円+税)、「桜田門外ノ変 ㊦」(新潮文庫・505円+税)のことを。大岡昇平「堺港攘夷始末」は、慶応4年に大阪堺港で、フランス水兵と土佐藩兵との間に起こった事件に取材している。大岡昇平の遺作ともなった本書は、「俘虜記」「野火」「レイテ戦記」などと並ぶ代表作と呼ばれるに相応しい。次の、吉村 昭「桜田門外ノ変 ㊤」「桜田門外ノ変 ㊦」は、抜群の取材力で沢山の話題作をものしてきた吉村の、歴史小説の代表作と目されるものである。吉村の著作もずいぶん長きにわたり読んできた。数えてみたら40冊を越えているが、その中で印象に残ったものを上げてみる。☆(面白い=私的読書評価)が、「破獄」「戦艦武蔵」「空白の戦記」「総員起シ」「冷たい夏、熱い夏」「一家の主」「私の文学漂流」「私の取材余話」の8冊で、中で「冷たい夏、熱い夏」は時間を経て(25年間の)再読し、あらためて素晴らしさを実感した。

 

大岡昇平「堺港攘夷始末」 慶応四年二月十五日、フランス水兵と土佐藩兵との間にその事件は起こった。殺されたもの、切腹したもの、死は免れたもの-悲運な当事者たちを包みこむ事件の全貌を厳密正確に照らし出そうとする情熱、歴史をみはるかす自由闊達な眼差し……構想十年、歴史を文学に昇華させる夢を紡いだ偉大な作家の渾身の遺著。

 

   

 

吉村 昭「桜田門外ノ変 ㊤」 幕末日本の進路を決めた井伊大老暗殺!水戸薩摩両藩18人の襲撃者の側から全貌を描く。

 安政七年(1860)三月三日、雪にけむる江戸城桜田門外に轟いた一発の銃声と激しい斬りあいが、幕末の日本に大きな転機をもたらした。安政の大獄、無勅許の開国等で独断専行する井伊大老を暗殺したこの事件を機に、水戸藩でおこって幕政改革めざした尊皇攘夷思想は、討幕運動へと変わっていく。襲撃現場の指揮者・関鉄之介を主人公に、桜田事変の全貌を描ききった歴史小説の大作。

 

   

 

吉村 昭「桜田門外ノ変 ㊦」 時代を先駆けた志士たち!幕政改革をめざした大老暗殺は結果的に倒幕への道を開いた。

 水戸の下級藩士の家に生まれた関鉄之介は、水戸学の薫陶を受け尊皇攘夷思想にめざめた。時あたかも日米通商条約締結等をめぐって幕府に対立する水戸藩と尊王の志士に、幕府は苛烈な処分を加えた。鉄之介から水戸・薩摩の脱藩士18人はあい謀って、桜田門外に井伊直弼をたおす。が、大老暗殺に呼応して薩摩藩が兵を進め朝廷を守護する計画は頓挫し、鉄之介は潜行逃亡の日々を重ねる……。

 

   

 

写真は、東山丘陵運動公園の遊歩道で撮影する。