(再録)長谷川郁夫「美酒と皮嚢(かくのう) 第一書房・長谷川巳之吉」(河出書房新書・6380円) | 野球少年のひとりごと

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(再録・2022.1.20既出)

わが家の裏庭にバス道を隔てて立つ、小学校の児童にコロナ感染者(濃厚接触者かも知れない)が出て明日は休校となる。帰宅して来た孫娘(小学4年生になる双子の)の一人のクラスにも何人か休んでいる子がいて、一人はPCR検査待ちとかで話は聞いていたが、いよいよ当地にもコロナ禍が目に見える形でやって来た。わたしは二度のワクチンを受けたが、女房は最初のワクチン接種時にアナフィラキシーに似た症状が出て、医師の判断で二度目の接種は諦めたので少し心配である。年明けから、買い物は娘が行ってくれているし夫婦ともの通院なども、すべて娘の車で行くようにしている。用心に越したことはないので、宅急便(アマゾンを中心に、他と比べても実に多い)の受け取りも女房はマスクをして行っている。(わたしはマスクを付けないが)救急車の往来も気持ち増えたように思うが、これなどもコロナ感染と結びつけてしまうところがある。今日なども大阪でのコロナ感染者が6000人に迫る勢いであるが、いつ頃にピークアウトが来その後どのような形で収束に向かうのか大変気になる。

 

本の話である。昨日に続き長谷川郁夫の著作から、戦前に盛況ぶりを示した第一書房の当主・長谷川巳之吉の生涯を辿った、「美酒と皮嚢(かくのう) 第一書房・長谷川巳之吉」(河出書房新書・5800円+税)のことを。帯に、「伝説の出版人の二十年の軌跡を追い昭和文化の全体像を再現した評伝文学の到達点!」とある。出版人の、しかも伝記とあれば読まないわけには行かない。

 

長谷川郁夫「美酒と皮嚢(かくのう) 第一書房・長谷川巳之吉」 震災後の出版界に美と豪奢の時を築き、刊行書目をもって自叙伝を書くという高邁な精神を貫いた男がいた!堀口大學、萩原朔太郎らの絢爛たる造本の豪華本を刊行し、徹底した在野精神、反アカデミズムで「第一書房文化」と讃えられて大正・昭和の出版・文学界をリードしながら、最盛期の昭和十九年に自ら書肆を閉じた伝説の出版人の航跡と謎を追う、渾身の評伝。
 近代の出版史において、(たとえ独断ではあっても)私には、出版という行為に明確な自覚をもち、よい意思の人であった巳之吉が、巳之吉だけが、私の問いに耐えうる人物であるとの確信があり、それを片時も疑うことはなかった。いうなら、二十余年のながい付き合いに甘えて、巳之吉の胸を借りていたのだった。あきらかに、巳之吉にとって出版は、詩や小説、批評といった文学的行為と等質の制作であり、昭和十九年二月、「第一書房」という未完の作品の筆を折ったのである。その決断は、作者としての最後の良心を示したものであったとみるべきかも知れないと、いまにして思う。(「あとがき」より)

 

   

 

写真は、東山丘陵運動公園遊歩道で撮影する。