(再録)樋口哲子(著)・中島岳志(編・解説)「父 ボース 」(白水社・1800円+税) | 野球少年のひとりごと

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(再録・2022.1.14既出)

夢で、定年まで30年近く勤めた会社で大変可愛がって貰ったY専務が現れる。わたしがA&C事業部の責任者になってからの数年は、直接の上司として(わたしが大阪本社で、専務は東京営業所に在職のまま、いわばリモート・コントロ-ルの形で)仕えた。当時、岸和田祭(だんじり)を見てみたいという話が出て招待したことがある。岸和田祭りのいちばんの見どころである曳き出し(午前6時からの)に間に合うように、前日に堺のロイヤルホテルに泊まり5時半頃に南海電車岸和田駅の改札口で待ち合わせた。そこへ女性連れで現れた専務、その女性を小唄の師匠と紹介してくれた。要は愛人である。曳き出しの1時間半ほどを曳行コースに沿って案内した。その後、わが家にお連れし、事前に所望の朝食を差し上げたら水茄子で美味しそうに茶漬けをした。女房も含め4人でしばらく談笑の後、早起きしてきたので少し昼寝をしたいということでその用意をし、わたし達夫婦はその場を離れた。1時間ほどして目覚め、それから京都でも行くのかわが家を後にした。小唄の師匠はかなりの美人で、おそらく粋筋の人なのであろうと思うが、なかなか捌けたいい女であった。それにしろ、それほどにわたしに気を許していたのだと思う。専務に直接教わったことは殆どないが、その立ち居そのものから学んだことは沢山あった。当時の社長であったTさん(広告代理店に勤めていたわたしを引っ張ってくれた恩人であり、大変「人たらし」の方であった。)とともに、わたしには忘れられない人である。お二人とも亡くなってしばらくになるが、ときどき夢に現れて叱咤してくれる。

 

本の話である。本箱から取り出してきたのがインド関連のもので、樋口哲子(著)・中島岳志(編・解説)「父 ボース (追憶のなかのアジアと日本)」(白水社・1800円+税)と中島岳志「インドの時代(豊かさと苦悩の幕開け)」(新潮社・1500円+税)の2冊のことを。イギリスによって過激派として指名手配されたことから、1915年に日本に逃れてインド独立運動を続けた。ラス・ビハリ・ボースは相馬愛蔵と相馬国光の長女、俊子と結婚した。(Wikipediaによる)この辺は、臼井吉見の名著『安曇野』(現在、単行本、文庫本とも絶版中で、古本でしか読めない)で詳しく読むことができる。帯に、「インド独立運動の闘士『中村屋のボース』の娘が語る、父の肖像。」とある。『安曇野』の主人公である、新宿中村屋・相馬国光の長女、俊子とボースとの間に生まれた著者が、父ボースについてどのように語っているのか興味がある。もう1冊の、中島岳志「インドの時代(豊かさと苦悩の幕開け)」は、「父 ボース」の編・解説の、。中島岳志による現代インド・リポートである。現代インド・リポートとしたら、小熊英二「インド日記(牛とコンピュータのの国から)」(新曜社・2700円+税)があって、読み比べて見るのも一興があると思う。

 

樋口哲子(著)・中島岳志(編・解説)「父 ボース (追憶のなかのアジアと日本)」 磊落な家庭人でありながらアジア解放を懸命に模索した一革命家の生涯とその時代がよみがえる。

 …父は私が生まれてから半年ほどして、日本に帰化しました。このとき、父が相馬家に入るのではなく、あらたにボース家を立ち上げて、母と兄、私を新家の籍に入れることになりました。その際、犬養 毅さんから、「防須」という字を頂きました。以降、私は結婚するまで「防須 哲」という名前で生きてきました。(本文より)

 

   

 

中島岳志「インドの時代(豊かさと苦悩の幕開け)」 これが現代インドのリアルだ!

 激変する政治・経済・宗教・生活。戸惑い逡巡する「21世紀の大国」インドの内面に鋭く迫る。

 インドには「悠久の大地」も「貧しい子供」も「存在」する。しかし、それらはやはり現代インドの一側面であり、非常に一面的な視点から捉えた姿だ。/また、日本の経済誌などが描く「経済成長著しいバラ色のインド」というイメージも、一面的な姿だ。/先入観や一時的なブームに流されず、インド社会をじっくり多角的に捉える眼こそが、現在の日本人に求められている。

 インドに、一方的な幻想を押し付け、インド人を「自己の欠落を補完してくれる他者」としてまなざすようなあり方から、我々日本人はそろそろ脱却しなければならない。(「あとがき」より)

 

   

 

小熊英二「インド日記(牛とコンピュータの国から)」 話題作『単一民族神話の起源』『“日本人”の境界』で、近代日本を問い直してきた著者がインドを行く。グローバリゼーションにゆれる多民族国家インドの社会や宗教、芸術、NGO、フェミニズムなどと触れあいつつ、日本のあり方を考える旅。

 

   

 

写真は、東山丘陵内運動公園遊歩道で撮影する。