(再録)吉川 潮「芝居の神様(島田正吾・新国劇一代)」(新潮社・1900円+税) | 野球少年のひとりごと

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(再録・2021.12.11既出)

午後3時で16度、まさに小春日和といってよい一日であるが、久し振りに1時間ほどのウォーキングに出かける。途中休憩する運動公園のグラウンドでは少年野球(中学生が対象の、硬式)チームが練習している。監督の指導のもと20人ほどの選手がロングティをやっている。3年生が引退し、1、2年生であるからか50メートルほど先のネットまで届くような打球を打つ者は殆どいない。おそらく来年の夏頃には、ネットのさらに上を越すような打球を打てる者が出てくるのだろうが。しばらく練習を眺めてから、公園の周回道路を1周し街路(ニュータウン内の)に出てからは速歩で30分ほどの帰路を戻る。帰宅するとベースボール・キャップ(今日はMLBのカージナルス)の中も、ウィンド・ブレーカーを着た背中も汗でびっしょりである。すぐに家に入らずに玄関の階段でスマホのチェックをしながら一休みし、汗を引かせてからドアを開ける。

 

本の話である。自伝、評伝ものであるが、今日は演劇人に関する2冊を取り上げる。先ず、新国劇を辰巳柳太郎と二人で支えた島田正吾について当代随一の演芸の目利きとして知られる吉川 潮が描いた、「芝居の神様(島田正吾・新国劇一代)」(新潮社・1900円+税)と演劇評論家としてサントリー学芸賞受賞の『日本現代演劇史』などの好著を持つ、大笹吉雄による「花顔の人(花柳章太郎伝)」(講談社文庫・854円+税)の2冊のことを。わたしなどの若い頃に、テレビで新国劇や新派が放映されていて新国劇に関しては割と熱心に観たものである。新国劇では何と言っても辰巳柳太郎と島田正吾の2枚看板で、それが後年、緒形 拳や大山克巳と代替わりしてゆくがその頃にわたしの興味も失せた。辰巳柳太郎と新国劇でも演出をした劇作家北條秀司は、ともに母校の大先輩である。一方の、新派も花柳章太郎や水谷八重子(初代)もときどきは観た。波乃久里子などは好きな女優のひとりであった。大矢市次郎、伊志井寛、森 雅之、柳永二郎など、映画やテレビでも活躍する名優揃いであった。そのようなことを久し振りに思い出させてくれる2冊の本、刊行はそれぞれ2007年と1994年である。

 

吉川 潮「芝居の神様(島田正吾・新国劇一代)」 人を喜ばせるため、神に選ばれた役者。女も男も惚れて、しびれた。

 「瞼の母」「人生劇場」「白野弁十郎」、ひとり芝居……日本人の心の名舞台 主役はいつも、この男だった。

 大衆娯楽の殿堂、新国劇の看板役者であり、勝新太郎、六世歌右衛門、十八代勘三郎ら映画・歌舞伎の名優も認め、敬愛した名優のなかの名優。 「俺は人を喜ばせるため、神に選ばれた人間だ」 師匠の言葉を胸に、男は96歳まで舞台に立ちつづけた。 師・澤正(さわしょう)、盟友・辰巳、緒形 拳、池波正太郎らとの逸話、名台詞と共に辿る芸と生涯。

 

   

 

大笹吉雄「花顔の人(花柳章太郎伝)伝)」 花柳と新派の全てがこの一冊で分かる 「大佛次郎賞」受賞!天才名女形の素顔

 情を表現して秀逸、新派の大輪の“花”花柳の光と陰を、新派の盛衰の中に描く

 湯島の芸者置屋に育ち、新派に入門、恋も芸のうちと奔放な恋に生き、昭和四十年七十歳で急逝した花柳章太郎伝。「夢の女」のお浪、「大つごもり」のおみね、「あぢさゐ」のきみ……一時代を画した新派の不世出の名女形の生涯を、新派の盛衰と人間関係の愛憎を軸に、綿密な取材で描いた渾身の一冊。