(再録)「安岡章太郎集」全10巻(岩波書店・各巻3600~4000円) | 野球少年のひとりごと

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(再録・2021.12.5既出)

午後から、泉南市に住む弟がやって来る。先週は、インフルエンザ・ワクチンを接種後の発熱で来なかったので2週間ぶりである。沢山の泉州蜜柑(岸和田市包近の)を持って来てくれる。長野産(飯田市と上田市の)の林檎と同じく泉州蜜柑(貝塚市三ヶ山の)を持って帰らす。貰い物の紅茶もと思い声を掛けたら、紅茶もいろいろ試して来た(とにかく何かにつけ凝り性で)がいまは飲んでいないということでこちらはやめる。その紅茶であるが、一昨日、東京の友人であるFさん(美術専門の広告代理店を営む)から送っていただいた、「カレルチャペック」という紅茶専門店のもので、Fさんの事務所のある吉祥寺にも店があるようでそこのものらしい。カレル・チャペックというと、わたしなどチェコの作家を思い浮かべるが、何か関係があるのだろうか。女房、元々紅茶が好きで、いただいた「アールグレイ」「ミルクキャラメルティ」「ホワイトピーチティ」などを早速賞味している。毎年今頃にFさんから送っていただく、ケーキ(フルーツケーキやシュトレーンなど)の類いは東京山手ならではのもので、わが家にとって珍しいものばかりである。現役時代に、取引先としてはじまったFさんとのつき合いも20数年になる。最近はもっぱらメールでのやり取りが中心となっている。これはわたしが徹底して出不精のためでもある。コロナ禍が収束すれば大阪ミナミあたりでもと思わないではないが…。

 

本の話である。先頃発売の「BRUTUS 10/15 特集・村上春樹㊤ 『読む。』編」(マガジンハウス・820円)の、「村上春樹の私的読書案内。」に「安岡章太郎集 1」(岩波書店)が紹介されていて、その文章をそのまま引用すると

 

 なにしろ文章の姿勢がまっすぐだ。

 戦後の日本の小説家の中でいちばん文章がうまい人というと、やはり安岡章太郎だろう。最初に彼の『ガラスの靴』を読んだとき、そのうまさに驚愕した。そしてそれが彼にとっての処女作であると知って、更に驚愕した。この人はそもそも最初から既に完成した作家だったのだ。美しい声をもつ歌手と同じで、生まれつきの才能と言ってしまえばそれまでだが、なにしろ文章の姿勢がまっすぐだ。/その文章家としての質の高さは、彼の作家人生の最後まで損なわれることなくしっかり維持されたが、その美質がもっとも溌剌として表出されたのは、やはり初期の短編集ではなかっただろうか。この『安岡章太郎集 1』に収められた「ガラスの靴」「ジングルベル」「宿題」「愛玩」「蛾」……どれもまさに舌を巻く出来の短編小説だ。/安岡さんとは一度だけ酒席を共にしたことがあるが、そのときはまだ彼の作品をきちんと読んでおらず、「へんなおっさんだな」としか思わなかった。残念だ。

 

それに影響されて、と言うのも、安岡章太郎の初期の短篇の瑞々しさは百も承知であり、ひとにもそのことをよく喋ったことがあるが、村上春樹がこのように絶賛しているのを読むと、もう少し腰を据えて読む必要があると考えた。そこで10巻からなる「安岡章太郎集」を購入しょうと思いアマゾンで確かめると、30年以上前(全集刊行のスタートが1986年)に刊行されていて、全巻を購入するとなると古本のほうが手っ取り早いし当然のことに廉い。そこで新本が手に入にくい(絶版などで)ときに利用している「日本の古本屋」で調べると、全巻セットで13000円(送料別)がいちばん廉いので注文した。それが今日到着したのであるが、全冊とも中身は真っさらでおそらく買った人が頁を開いてもいない、箱は相応に少し傷んでいるものもあるがとにかく古本とは考えにくいほどの美本揃いである。全集中の半分ほど(特に初期のものはほぼすべて)は単行本刊行時に読了している(すべては裏庭に設えている本専用の倉庫にある筈だが、100パッキンを越す読了のものから探す手間を考えると頭を抱えるところがある)し、安岡の晩年になって発表のものは書斎の本箱にあるがこの機に全集のすべてを、しかも発表順に読んでみようと思い立っての購入であったが、このように美本揃いは考慮外のことで、今日は我ながら大変嬉しいことになった。

 

   

 

写真は、貝塚市二色浜海浜公園で撮影する。