(再録)川本三郎「台湾、ローカル線、そして荷風」(平凡社・1800円+税) | 野球少年のひとりごと

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(再録・2021.12.1既出)

朝から、何も予定が入っていない。年内の出かける予定も、今週に貝塚市役所まで住民票と課税証明書を貰いに行くことと、来週の月曜日に岸和田市民病院まで出かけ皮膚科での今年最後の診察(いまは三月に一度)を受けるくらいである。コロナ禍以前であれば忘年会のシーズンであるが、昨年に続きどこからも声が掛って来ない。今年は高校、大学の友人とも一度も会っていない。当地に引越ししてから知り合った友人がときどき覗いてくれるくらいで、書斎に通る人も激減している。12年前に退職したときに、一日中書斎での読書に勤しもうと(それが現役の頃からの念願でもあった)考えていた筈が、地域の頼まれ仕事(自治会の役員や民生委員、福祉委員などの)を全部引き受けたものだから、結構忙しいことになってしまった。それが昨年の秋にすべてを抛擲(少なからず嫌なことがあって)したことで暇になる予定が、5月に突如として叔父(昨夏に95歳で亡くなった、洋画家の)の遺産相続人の代表者となったことで、半年ばかり大変忙しい思いをした。それも相続人全員(12人の)に相続金を振り込んだことで終わった。それでも先週辺りは、その礼で訪れてくる従兄弟たちの応対(神戸の従兄弟などは三十数年ぶり)で時間を取られた。それらのすべてに決着が付き、いよいよまったく予定がなくなったわけである。望むところではあるが、予定が何もないことは少しだけ寂しいところがある。朝から晩まで本を読める環境がやっと出来たのにかかわらず、集中力がもう一つ高まって来ない。考えてみたら現役の頃も、忙しいときの方がそれこそ寸時を惜しんで読書に集中していたように思う。年内にはペースを取り戻したいと考えている。

 

本の話である。昨日に読了の、池内 紀×川本三郎「すごいトシヨリ散歩」(毎日新聞出版・1700円+税)が、敬愛するふたりの楽しい対談で一気に読めたこともあり、もう少し彼らのものをと思い取り出したのが、川本三郎「台湾、ローカル線、そして荷風」(平凡社・1800円+税)と池内 紀「ヒトラーの時代」(中公新書・860円+税)の2冊である。川本三郎「台湾、ローカル線、そして荷風」は、わたしより2歳年長の川本三郎が2年前に75歳になったときに出版されたものである。池内 紀×川本三郎「すごいトシヨリ散歩」で、70歳を越えても作家であり続けた人と、若くして亡くなった例えば太宰 治 や芥川龍之介と比べて、前者に親近感がわくし読む気がするというようなを述べていたが、わたしなども75歳になってそれは強く感じるところである。川本三郎の近年の仕事に親しみを感じるのもその辺が大きいかも知れない。もう1冊の、池内 紀「ヒトラーの時代」は、その対談にも登場のものであるが未読のこともありこの機にと考えている。

 

川本三郎「台湾、ローカル線、そして荷風」 生きていることの「色彩」の輝きを求めて―。ひとりローカル線に乗って、降りたことのない町を訪ねること、近年夢中になった、台湾の人たちとの交流のこと、そして深まりゆく、台湾への尽きせぬ思い……。ひとり迎えた老年の日々の「豊かな孤独」を綴る。2015-18年の日記
 相変わらず一人暮らしが続いている。2008年に家内を失くしてから十年以上になる。我ながらよくもっていると思う。(中略)/体力は確かに落ちている。さまざまな身体の故障もある。一人暮らしの不自由さは日々痛感している。家内を失くした悲しみも消えない。屈託は多々あるがそれでも、七十代のいま、若い頃に比べれば、はるかに平穏な暮らしに恵まれている。/おそらくそれは、好きな世界をいくつか持っているからだろう。/まず、七十代になって台湾のことが好きになった。2015年に何年かぶりで行き、台湾の出版社の人たちや作家たちと知り合い、交流が深まった。以来、毎年、出かけるようになった。(「まえがき」より)

 

   

 

池内 紀「ヒトラーの時代(ドイツ国民はなぜ独裁者に熱狂したのか)」 政界デビューから人気絶頂期まで 泡沫政党だったナチスの党首アドルフ・ヒトラーは、圧倒的人気を獲得し、権力の座へ駆け上がった。独裁制はなぜかくも急速に実現したのか。ドイツ国民がそれを指示したのは何か。アウトバーン建設、フォルクスワーゲン(国民車)の生産。労働環境の改善、社会福祉の拡充といった巧みな施策、そしてゲッペルス主導のプロパガンダ、ゲジュタポによる弾圧……。さまざまな角度から、ヒトラーを独裁者に押し上げた「時代」を描く。

 

   

 

 

写真は貝塚市二色浜海浜公園で撮影する。