(再録)小熊英二「私たちの国で起きていること(朝日新聞時評集)」(朝日新書・930円+税) | 野球少年のひとりごと

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(再録・2021.10.28既出)

夕方近く庭に出て、玄関横のオリーブの高所の枝を払う。今日アマゾンから届いた、髙枝鋏が「腕で押し切る新構造」とかで現在使用のものより強力で、直径20ミリくらいまでは鮮やかに切れるし、3メートルまで伸ばすことができるので便利である。この数年で、高枝鋏は2本、高枝切り電動チェンソー(直径25ミリ)が1本、充電式枝切りチェンソー(160ミリ)が1個、太枝切り鋏(55ミリ、テコ式、5段伸縮)、極太切苅込鋏(40ミリ)と立て続けに購入している。2本あるオリーブや枇杷、林檎、柿、無花果の生長に合わせて買っているわけだが、いつの間にかこんなに増えてしまっている。庭がもう100坪(330平米)でもあればよかったのだけれど、両隣にそれぞれ家が建っているので無理なことではある。と言って、別の場所に土地を買ってそこで木々を植えるようなことは考えていない。地所内にあって家から眺めることができるのが最低限の条件であるので。それとすぐに庭に出ることが出来ることも。今日も日が暮れるまで1時間半ほどの作業を熟した。体を動かすのは大変気持ちのよいことである。

 

本の話である。衆議院選挙を間もなくに控えて、小熊英二「私たちの国で起きていること(朝日新聞時評集)」(朝日新書・930円+税)と高橋源一郎『「ことば」に殺される前に』(朝日新書・850円+税)の2冊を紹介する。1962年生まれの小熊英二は、歴史学者であるが既に沢山の問題作を世に送って来た、気鋭の学者のひとりである。「私たちの国で起きていること(朝日新聞時評集)」は、「朝日新聞」に連載(2011年~2019年)の時評を纏めたものである。連載時にすべては読んでいるがもう一度読もうと考えてのことである。もう1冊の、高橋源一郎『「ことば」に殺される前に』は、1951年生まれの小説家による即興連続ツイート、「午前0時の小説ラジオ」を書籍化したものである。高橋源一郎については小説のファンと言うよりは、本書のような政治などへの発言を含むコラムをもっぱら愛読している。現代的な状況に対して的確な発言をし続けている、数少ない作家のひとり(池澤夏樹と並び)である。どちらもお勧めである。

 

小熊英二「私たちの国で起きていること(朝日新聞時評集)」 みんな、何に苛立っているのだろう。何をそんなに恐れているのだろう。日本と世界を見つめ続けた8年間の軌跡。

 急激に変動する現状に苛立ちながら、それを制御できない無力感を抱く人に不寛容が蔓延する。世界各地では、無力感の反映としての投票率低下、少数派への不寛容、新たな権威主義が広がる。だが、無力感と苛立ちを他者にぶつけても何も生まれない。逆にそれを制御する力を自覚することは、誰にとっても生きやすい社会を築く第一歩となる。(本書「弱者への攻撃」より)

 

   

 

高橋源一郎『「ことば」に殺される前に』 この国は、否定の「ことば」に感染している。<分断>された社会の<つながり>を回復するために、タカハシさんが放流する、十年間のメッセージ! 書き下ろし+朝日新聞「歩きながら、考える」収録

 <「ことば」によって相手を否定しょうとする者は、やがて、自らの、その否定の「ことば」によって、自身が蝕まれてゆくのである。>(本文より) 否定の「ことば」に感染し、<分断>された日本社会へ贈る緊急出版!前代未聞の即興連続ツイート「午前0時の小説ラジオ」が待望の書籍化。書き下ろし「『ことば』に殺される前に」に加えて、朝日新聞・不定期連載の「歩きながら、考える」を収録。個人の問題から社会の問題まで―見えない線に引き裂かれたこの世界の<つながり>を回復し、公共性を取り戻すためにタカハシさんが<放流>する、唯一無二のメッセージ。

 「ことば」は感染する!

 かつて、ツイッターは、中世の<聖域>のように、特別な場所、自由な雰囲気が感じられる場所であるように思えた。共同体の規制から離れて、人びとが自由に呼吸できる空間だと思えた。だが、いつの間にか、そこには、現実の社会がそのまま持ちこまれて、とりわけ、現実の社会が抱えている否定的な成分がたっぷりと注ぎこまれるような場所になっていた。(中略)「ことば」は人を殺すことができる。だが、そんな「ことば」と戦うことができるのは、やはり「ことば」だけなのだ。(本文より抜粋)

 個人の問題から社会の問題まで―この世界に<公共性>」を取り戻すための思考と実践

 

   

 

 

写真は、貝塚港で撮影する。(ヨットやクルーザーの係留地付近)