カミュ「幸福な死」(新潮文庫・590円+税)、「最初の人間」(新潮文庫・670円+税) | 野球少年のひとりごと

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また、父・洋画家「仲村一男」の作品を毎日紹介しています。

午後から、女房は娘の運転する車で岸和田まで出かけ、所属する女声合唱団の定期練習に参加する。喉の調子が余り良くないので迷っていたが、人と接触できるわずかな機会のひとつなので出席することを勧める。まあ、小さな声であれ皆と一緒に唱和すれば充分であると思う。今日は帰りにいつも車に同乗させてくれるIさんの都合が悪いので、進学塾まで子供たち(小学6年になる双子の女の子)を車で送る娘の車に、南海貝塚駅前あたりで拾ってもらい帰宅の予定。

 

本の話である。昨日に続き、カミュの代表的作品である、「幸福な死」(新潮文庫・590円+税)、「最初の人間」(新潮文庫・670円+税)、「転落・追放と王国」(新潮文庫・670円+税)の3冊のことを。「幸福な死」の翻訳者である高畠正明(フランス文学者)は、父の師である洋画家・高畠達四郎(独立美術)の息子さんである。わたしは子供の頃に父に連れられ、高畠先生の熱海の別荘に行ったことがある。先生に声をかけて貰ったことも覚えている。熱海の別荘の隣には小説家・谷崎潤一郎が住み、東京港区の住まいの隣には映画評論家・津村秀雄が住んでいて、高畠正明は津村秀雄のお嬢さんと結婚している。そのようなことまで思い出させてくれる、カミュ「幸福な死」である。

 

「幸福な死」 アルジェリアの平凡な青年メルソーは、富裕な不具者ザグルーの「時間は金で贖われる」という主張に従い、彼を殺害し金を奪う。そして<世界をのぞむ家>で三人の女との共同生活に至福の時を見出したのち、孤独の中で幸福な死を迎える―カミュにとって最初のロマネスクな企てであり、若い感性と不条理の哲学の生成を示すこの長編小説は、『異邦人』生誕の秘密を解き明かす貴重な作品である。

 

   

 

「最初の人間」 戦後最年少でノーベル文学賞を受賞したカミュは1960年、突然の交通事故により46歳で世を去った。友人の運転していた車が引き起こした不可解な事故の現場には、愛用の革鞄が残されていた。中からは筆跡も生々しい大学ノートが。そこに記されていたのは50年代半ばから構想され、ついに未完に終わった自伝的小説だった―。綿密な原稿の精査によって甦った天才の遺作の全訳に補遺、注を付す。

 

   

「転落・追放と王国」 パリでの弁護士生活を捨て、暗い運河の町・アムステルダムに墜ちてきた男、クラマンス。彼の告白を通して、現代における「裁き」の是非を問う、『異邦人』『ペスト』に続くカミュ第三の小説『転落』。不条理な現実、孤独と連帯といったテーマを扱った六篇の物語からなる、最初で最後の短編集『追放と王国』。なおも鋭利な現代性を孕む、カミュ晩年の二作を併録。

 

   

 

「フランス」で描いた色鉛筆によるスケッチから

 

「洋画家 仲村一男」のホームページ

 http://www.nakamura-kazuo.jp/