その店員さんはデカかった。あまりにもデカすぎた。二メートルはゆうに超えていたのだ。そのデカい身体を申し訳なさそうに肩をすぼめながら蚊の鳴くような声でレジを打っていた。
デカい、ということはこの国において、我々中肉中背が考える以上に窮屈なのだろう。おそらく、デカいという理由で嫌な想いをたくさんしてきたに違いない。
身長何センチですか?
と、聞きたい気持ちをわたしは懸命におさえた。
失礼かもしれないからだ。
雰囲気から察するに、心は繊細に違いない。
わたしの心の中に湧き上がってきた感情は、
「育てたい」
だった。
プロレスラーにして、デカいということに自信を持って欲しかった。
デカい、は素晴らしいことだと気づいて欲しい。
デカい、は正義なんだ。
コスチュームはショートタイツにしよう。
黄色かな?
でも岡田さんと被るからなあ。
赤はまだ早いよな。
必殺技はアイアンクローだ。
ベルトに初挑戦するときに、アイアンクロー式のチョークスラムを初めて解禁しよう。
ライバルが挑戦してきたときには、アイアンクローで失神しているライバルに、ダメ押しでアイアンスラムを喰らわせるのだ。そして試合後、「はっきり言って、(ライバル)は何度もやりたくない相手。だから、ああするしかなかった。なんか悲しかったね。」と言ってもらいたい。だが彼はまだ持てる力を全て出しきれていなかった。
いずれ彼を超えるレスラーが現れ、そのときに初めて彼は対戦相手を尊敬する。涙を流した。
「ガキの頃から親に言われてきたんだ、全力を出すなって。どんな王者も全力を許しちゃくれなかった。あんたはそんなオレに全力を出させてくれるのか。。。」
「感謝ッッッ!!!」
そして彼はデカくて丈夫な体に生まれてきたことを、心から感謝した。
以上はわたしの妄想だが、コンビニの彼には自信を持って欲しいの。