【神道つれづれ 60】

※ H30.6 発行「社報」 198号より

 

NHKBS「こころ旅」という番組をご存知ですか。

火野正平さんが、視聴者の心の風景をスタッフと一緒に自転車で旅し、紹介する番組です。

先月の第四週は山口県。そのラストを飾ったのは、防府市陶の神社周辺でした。

ここを心の風景としてリクエストしたのは、森林インストラクターで鉄子のやまんばさん。知り合いの手紙が読まれたのは初めてで、えっ。と驚きました。

やまんばさんの心の風景は、幼い頃遊んでいた神社周辺の森。少しワクワクしながら見ていたのですが、実際の風景は子どもたちの姿を連想できる環境とは違いました。

でも、手紙の内容から、人の手が入っている森の中に、子どもたちが自ずと溶け込んでいる風景だったんだろうと感じました。

 

私の心の風景も、浮かんでくるのは、やはり幼い頃の思い出。いつも自然の中でわくわくドキドキした風景です。幼い私が大蔵嶽の奥宮(奥の院)へ、毎月登拝をしていた頃の風景です。

木の丸太橋をドキドキしながら渡ったこと。沢の岩を選びながら川(沢)を渡ったこと。険しい山の坂道を一生懸命に登ったこと。川の冷たい清水を両手で漉くって飲んだこと。木陰で休めてほっとしたこと。大変だったけど楽しかった登拝。

そこには、幼い私を見守ってくださるお年寄りや、声掛けをしてくださる大人の方、年齢の近い仲良しの子どもたち。そして、父の姿もありました。

 

迎え岩まで行くと、ここから神域。  みんな揃って神様にご挨拶をします。

すると、頑張ろうという気持ちになりました。 そして、大きな通天楓の前で一礼。 板屋根のように大きく枝を広げるカエデ(イタヤカエデ)です。この楓に、どんなに癒されたことでしょう。 ここで休まなければ、次はさらに険しい坂道が続きます。

ゆっくり・ゆっくりと、一歩一歩確実に。 そういえば、誰かが、教えてくれたこと

「人生みたいだねぇ。山あり谷あり。この坂道も乗り越えれば神様に会える」って、

そんな励ましの言葉も、風景と一緒に蘇ってきます。

この七曲りの坂を超えると、いよいよ岩屋の広場に着きます。岩屋の広場は「さにわ」と呼ばれています。この斎庭(さにわ)に入る前も一礼して、かがり火を焚き、いよいよ祭祀が始まるのです。そんな一連の風景が、走馬灯の様に蘇ります。

 

いつの日か、今度は私が見守り役として、再現してみたい心の風景です。