【神道つれづれ 49】
※H29.5 発行「社報」185号より
神道の基本的な資料といえば、『古事記』『日本書紀』の神世の巻。 そして『万葉集』。学生時代、私が興味を持っていたのは、万葉時代の自然観でした。
『万葉集』は、平安時代のような雅で技巧的な歌が収蔵されているわけではありませんが、何か特別な雰囲気を伝えています。
私のもともとの得意分野は、文学というより国語学。言葉そのものが持つ意味を考えていく学問に、興味を持ちました。
例えば、「さ」。 今月は「さつき」です。
「さ」には、清らかな芽生えや誕生の意味があります。早乙女という言葉には、神様にお仕えする乙女というイメージがあります。
『万葉集』には、音を漢字で表す擬音表記が多く使われています。
文字より前に、言葉があり、 その前には、音がありました。
中でも、神事に関することに「さ」音が注目されているのは、有名です。このサ行音を快く感じるのは、日本人独特の感性だといわれています。
不思議ですね。
卒業論文に私は、この「サ」音を持つ形容詞、「さやけし」をテーマに選びました。
結論からいうと、初期万葉時代の言葉は、音魂的なものが存在していたのではないかということ。
「さやけし」「さやさや」と歌を詠むことによって、その場を清浄な雰囲気に変える効果がある。または、清浄な空間にするために、その音を入れ込む。
そこには、サ音に対する、当時の人々に共通のイメージがあったのではないかと推測されます。
人の名前もそうですね。 有名人はイメージしやすい。
そんな時代があったのです。
今月は「皐月」。新しい清らなものが誕生する月であってほしいですね。