【神道つれづれ 47】
※H29.3 発行「社報」 183号より
神事に欠かせない樹木と言えば、「榊」。
『神道辞典』では、
「社殿・祭場等の装飾・神具に使用する植物。記紀の天岩窟の段に「真賢木」「真坂樹」・・・社殿・鳥居・玉垣等に付けている清浄を示し、神籠・真榊・玉串・舞人の手草等、広く使用される・・」とあります。
今では、当たり前に使っている サカキ=「榊」ですが、古くはいろいろな漢字で書かれていました。杜・椗・龍眠木・栄木等と書くもの。
サカキ=「小香木」として、楠・木犀・樒・桂・広心木・桧など、香りのある木を指すこともありました。
また、「栄樹」で四季を通して茂る常緑樹の総称で、特定の木ではない等と、様々な解釈があります。
西日本では、サカキ=「榊」ですが、サカキが育たない地域では、ヒサカキ・カシ・ツバキ・ツゲ・スギ・モミなどを代用していたことがわかっています。
それにしても、サカキは、その幹が真っすぐに先端まで伸び、規則正しく枝が分岐しており、見た目にも美しく、葉は清々しい緑色です。新芽が鳥の爪のように曲がっているのも特徴です。
昔は、東日本では見られなかったらしいのですが、全国各地から奉納植樹された明治神宮の森では、立派に成長し、今では、カシ類やクスノキ等と林をつくっているそうです。
京都では、葵祭の前儀として、上賀茂神社の御阿礼祭と下鴨神社の御蔭祭に、神様が御遷りになる大榊が立てられます。
これを「みあれ」と呼び、榊が依り代としての働きをしていることがわかります。
また、滋賀県近江八幡市の賀茂神社の大祭でも、古事記由来の祭りが斎行
大神様のご神霊の依り代としての大榊を、大勢の人が行列を組んで御渡りをする。
参列の人々は、この神事に関わることで、祈り事が成就されると伝えられているそうです。
いずれにせよ、大昔は、何事か困難なことがあった時、神の依り代としてサカキを特別視していたようです。神楽の採り物にも、サカキは神様登場の重要な場面で使われます。
古代から、人々に親しまれたサカキ。
立派な枝ぶりの大榊に出会えたら、私利私欲の無い、無垢な心で向き合ってみたいものです。
古代の人の想いに触れれば、何か不思議な事が起こるかもしれませんね。