形成外科では、新しい方法を世に発表していく人がのし上がっていく世界です。

外科系はそうですが、特に形成外科ではその傾向があります。

 

隣の指から皮膚をとって、移植する、皮膚を回転させるなどなど。

指先の欠損部にほかのところから皮膚を持ってくるなど。

様々な方法が今まで発表されています。

 

もちろん昔からある方法も大事にされています。

昔から教科書に載っている方法こそ一番良い方法とされています。新しい方法が教科書に載ればそれはスタンダードになる。

 

実は私が落ちこぼれと思っているのには、きちんと真皮縫合をかける医師ではなかったということにあります。

 

まだ医師として6年ぐらいのとき、ある手術をベテランの先生とするときがありました。

瘢痕を切除して縫い直す方法です。

そのころ一般的には皮膚の両端を引き寄せて盛り上げて縫うのが一番きれいになる。なおかつ、その時に真皮縫合という皮膚の裏から縫う方法をいかに強くするかというのがその先生のテクニックと考えられていました。

 

もちろん一緒に手術をした先生はぐっと真皮縫合をかけて、皮膚から1センチ近く縫合部を盛り上げていらっしゃいました。

 

ところが、私はそれがどうしても自分の中で、テクニック的にも少ない経験の中でもできなくて。皮膚の下の皮下組織を寄せてあまり緊張がなくなればそれでOK.

そこを表を縫う糸で、緊張がかからないように縫合していました。

実は今でも同じように縫います。

 

以前教えていただいた一人の先生が、そのような縫合をする先生がいらして、きれいだなと思ったので、そのように縫合するようになりました。

 

この方法を6年目の医者が独断でするということは

『それはダメな縫合だね』もしくは『下手だね』

といわれるのではないかと思います。

案の定、縫合の状態を見た先生は、そこにいた看護師さんにその旨いわれていたそうです。

私は後で看護師さんに聞きました。

要は『奥村は下手な医師』とレッテルが張られたのです。

 

でもどうしても、真皮縫合をしっかりかけるより、かけなくてもいい縫合部を作りたいと思っていました。

最近、瘢痕(傷跡)に糸の痕がつくのは真皮縫合が原因ではないかといわれるようになりました。

落ちこぼれの私はこれを聞いてちょっとホッとしました。



東京駅の夜景 大好きです。